赤ちゃんが刺激に反応している時に、脳がどういうふうに活動しているか。
赤ちゃんがなにかを繰り返し同じ刺激をもらうと飽きてくる「ハビチュエーション」(馴化・じゅんか)を利用して、研究する方法が行動研究では一般的だというところまでたどり着いた。光トポグラフィの手法を使えば、行動に現れることだけでなく脳に起きている活動の変化から知覚や認知の仕組みを見渡すような、大きな成果が期待できる。
多賀さんらの研究をいくつか紹介してもらった。
「例えば『バッバッバッバ』って言ってた音声を急に『パ』に変えるっていうことをしたときに、前頭葉のある部分では活動の馴化と脱馴化が起きるんです。これは今、大阪大学にいる中野珠実さんが見つけたものです」
つまり、「バッバッバッバ」と言われ続けると馴化が起こり、「パ」と急に言われると脱馴化が起こる。言われてみれば、当たり前のような気もするが、それが赤ちゃんで起きているということは、注目すべき点なのである。
「さらに言語の発達の過程もわかってきました。単に異なる音声に対して反応するということ以外に、言葉のどういう側面に赤ちゃんは注目して聞いてるかっていうのを考えると、いろいろ分析が可能です。例えばその中の1つとして重要なのが、抑揚なんですね。よくお母さんが赤ちゃんに話しかけるときに、歌のようなリズムで話しかけたりするっていうことがよく知られています。抑揚というのが音と言葉を考える時に重要な点になってますね」
多賀さんは実際にパソコンで音声を再生してくれた。