第4回 赤ちゃんの脳の中を見てわかった「発達の法則」

〈万国博覧会は、昨年開催された〉

 これを2通りの読み方で聞く。

 ひとつは、自然な抑揚を持ったもの。もうひとつは、アニメや映画に出てくるロボットのような平坦な発話。「バンコクハクランカイハサクネンカイサイサレタ」などと表記すると、雰囲気が伝わりやすいかもしれない。

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「今、首都大学東京にいる保前文高さんがうちのラボにいたときに発展したものです。例えば3カ月児に、普通の音声と抑揚がない音声を与えると、果たして脳のどこが活動を変えるか。すると、右半球の側頭・頭頂領域が、抑揚のある方によく反応して活動することが分かりました。ところが10カ月になると、同じ脳の場所が、逆にフラットな音声のほうにかえって活動を高めるっていう変化があったという結果です」

 これはおもしろい。

 3カ月児は、まだ言葉を言葉として受け取る回路を形成中で、その際、抑揚やリズム、強弱といったことを懸命に聞いている。一方、10カ月児では言葉を聞き分ける基本的な回路ができあがっていており、むしろ、通常はありえない平坦な読みの方に「あれっ」と反応してくる。ざっくりといって、そういう解釈らしい。

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 さらに視覚にかかわること。

「──赤ちゃんをだっこされた状態で、画像を見てもらうんですけど、おもちゃの映像が出た場合と、単なる幾何学模様が出た場合とで、どこが違うんだろうか、と。普通、視覚情報を脳が処理するためには、網膜から順次、情報が流れていって、視覚野から後頭葉の外側部が中心になって物の知覚がなされていると成人では言われてるんです。そういったものが、どのくらいの時期にどうできてくるだろうかという研究です」

「──2カ月と3カ月の赤ちゃんの比較しますと、2カ月の場合には、おもちゃでも幾何学模様でも、脳は同じようなパターンの活動を示します。ところが、3カ月になると、この後頭葉の外側部っていうところが、幾何学模様には反応しなくなるんです。実は、むしろ月齢が小さいときには、刺激の特徴にかかわらず、脳の広い場所が活動しやすいっていう傾向があって、それが発達すると、特定の刺激に対してしか反応しなくなる特殊化が起こると考えられます。これは、うちのラボの渡辺はまさんの発見です」

 ここまで来て、赤ちゃんの脳のひとつの特徴が見えてきたかもしれない。