第84回 自分の道

 フェアの前後もいれると、全部で1週間ほど。

 ジムの家族と共に、ミネアポリス郊外の家に泊まりながら、アートフェアに通って、その手伝いをしました。

 さすがにミネアポリスのアートフェア。

 ブルーベリー・アートフェスティバルの何倍もの規模で、作家のスタイルや表現も多様で、より現代的な作品が多く見られました。

 そこでも、作品は飛ぶように売れ、ジムは忙しくサインに応じていました。

 イリーでは見慣れないファッション、高層ビル、夜のネオン、騒がしい車通り……と、久しぶりの都会の空気を感じていると、東京が懐かしくなりました。

 アートフェアを終え、ジムの車に乗って、ミネアポリスからの長い道のりを、イリーに向けて帰ってくると、車窓からみえる森の色が、ずいぶんと変わっていることに気がつきました。

 グレッグの車で、はじめてイリーにやってきたとき、若々しく、鮮やかだったシラカバの葉の緑。

 それに比べると、いまは、盛夏の濃い緑を通り越して、すでに秋の気配を感じさせるような、落ち着いた色あいを見せ始めていたのです。

 ミネアポリスから戻ってきてほどなく、ジムはスタジオを離れて、どこか遠くへ撮影に出かけるということでした。

 そこで、ぼくは、8月13日から、ふたたびウィル・スティーガーのホームステッドにお世話になることになりました。

 イリーに買い出しに行くときも、ミネアポリスに行くときも、ウィルのところに行くときも、誰かの車のお世話にならざるを得ない自分に、ふがいなさを感じました。

 やはり、この地域で自由に撮影をしていくには、車がなくては話にならない。

 次に来るときは、せめて一番安い中古車が買えるぐらいの貯金をして来ようと、心に決めました。