第4回 ヌナターク

大陸氷床上をスノーモービルで行く。デコボコした青い氷の世界が果てしなく続いている。

「わーーーーー南極だーーーーっ!」

 すっかりテンションが上がってしまった私は、大声でそう叫んでいた。この1年間での大きな声ベスト1だったと思う。もちろん、エンジン音と裸氷帯の上を走る振動音がけたたましく響いて、それは誰にも聞こえないのだけれど。

 ノボラザレフスカヤ基地をスノーモービルで出発して最初の30分は雪上を走っていたのだが、そのあとは裸氷帯に入った。そこは一面ツルツルの青い氷の風景。太陽でまぶしく輝く、デコボコの不思議な形をした氷の地面が、視界の先にどこまでも果てしなく広がっている。その風景は圧倒的で、私は思わず声を上げたのだ。

振動と気合いのスノーモービル

 ところが、それはすぐに違う感情に変わっていった。デコボコを通り越し、尖った形になった氷の上を走ると、小刻みな衝撃と振動が延々繰り返されるのだ。脳と体全体にその振動が加わり続け、脳がしびれたような感覚になってきた。あまりスピードを出すと、体はもちろん、橇に載せている荷物やスノーモービル自体にもよくないので、その間、アクセルを微調整し続けなければならない。

 ノボラザレフスカヤ基地を出発してから8時間。このアクセル微調整が、スノーモービル隊を苦しめていた。私たちが採ったのは、途中にあるクレバス帯を避けながら大きな“くの字”を描くようなルート。それまで1~2分程度の休憩を3回取っただけで、私たち3人はひたすら大陸氷床の上を内陸に向かっていた。

 私たちが運転していたスノーモービルには、右ハンドルのそばに親指を使って操作するアクセルレバーが付いている。右手の親指からその付け根辺りでアクセルをコントロールし、他の4本指でハンドルを握る。おかげで、さすがにそれが7時間半以上も続いた頃には、アクセルをちょうど良い加減で握る力もなくなってきて、とにかく気合いだけで腕と手を保っていた。

途中で雪上車を追い越す。一番右側のスノーモービルに乗っている私は見事に何者か分からないほどの完全防備。ノボラザレフスカヤ基地からアンターセー湖までの間に出会った動くものはこの雪上車だけだった。(Photograph by Dale T. Andersen)