第3回 南極の洗礼

南極のロシア基地の中心。ロシア語で“ノボラザレフスカヤ”の看板がある。

 南極の朝はミルク粥から始まった。

 みな、至極当たり前にミルク粥を皿に盛って、砂糖とシナモンをかけて食べている。正直なところ、私はミルク粥が好きではない。牛乳も米も私の大好物だからこそ思うのだ、何ゆえに、米をミルクと砂糖で煮て、こんなふうにしてしまうんだろう・・・と。北極スヴァールバル諸島での調査の時もよくミルク粥が出るが、いつもそれを避けて他のものを食べてきた。しかし今回はそうはいかないようだ。何せミルク粥の他には紅茶とコーヒーしかないのだから。

 隣りに座るクレメンスを横目で見ると、ミルク粥に砂糖とシナモンばかりか蜂蜜まで加えているし、目の前のデイルに至ってはチェリージャムとヨーグルトを加えている。そんなわけで、私も周囲に合わせて何食わぬ顔でモリモリ食べた。これはもしかしたら、今回の南極で私に課された大きな試練なのかもしれないとさえ思った。

ノボラザレフスカヤ基地

 気温マイナス18℃。私たちはロシアの南極基地の一つであるここノボラザレフスカヤ基地で、アンターセー湖調査の準備を整える。移動のためのスノーモービルを整備し、保管している荷物と、持ち込んだ荷物を雪上車に積み込む。

 その間、寝泊まりするのは、基地の中心から徒歩15分ほどの外れにあるゲストハウスだ。室内とは言え、昨晩寝る前の室温はマイナス10℃。まだ寒さに体が慣れていなくてあまり眠れなかった。ゲストハウスは夏の間だけ開かれるのだが、全部で3棟建っていて、そのうち1棟には管理人的なロシア人夫婦・ルーニヤとナディアの部屋とダイニングがある。この夫婦も私たちと同じイリューシン第1便で到着したので、ゲストハウスの出入り口には雪が吹きだまり、裏の湖から補給する水もまだ開通していない。とりあえずアンターセー湖へ出発するまでの間、朝食だけはそこで、昼食と夕食は基地の食堂でとることになった。

 ノボラザレフスカヤ基地ではメールが出来ると事前に聞いていたので、昭和基地のように普通にインターネットがつながっているのだろうと思っていたのだけれど、それはガセネタだった。確かに食堂に共用パソコンがあり、メールが出来るのだが、添付ファイル無しの普通の短いメールを送るだけで10分。デイル曰く、「2年前に50kBのファイルを添付して送ったら、時が永遠に感じられた」らしい。

 まあ、メールが出来ないくらい別にどうと言うことはない、と思っていると、基地の要所要所にテレビが設置されており、ロシアのテレビ番組が流れている。録画だろうと思ったが、リアルタイムに衛星で繋いでいるそうだ。ロシア人的にはインターネットより、テレビのほうが優先度が高いのかもしれない。

ノボラザレフスカヤ基地のゲストハウス。我々アンターセー湖調査隊の国々の国旗が掲げられ、壁にはペンギンのイラストが描かれている。