第2回 急激に成長する赤ちゃんの脳で起きていること

東京大学大学院教育学研究科の多賀厳太郎教授。(写真クリックで拡大)

 赤ちゃんの脳の研究を進める東京大学の多賀厳太郎教授に、新生児の脳がすでに大人さながらに構造化されていると教えてもらった。多くのしわをもった形状といい、内部のネットワーク構造といい、大人の脳と変わりない域に完成していると。

 では、それがどう機能しているのか知るのが研究の方向性だろう。けれど、多賀さんは慎重に述べた。

「実は、ミクロに見ると、まだ足りていないものがあるんです。それは、シナプス形成です」

 シナプスとは、脳の神経細胞と神経細胞を結びつける接続部位のことだ。

「新生児の時には、たとえて言えば、インターネットのケーブルはとりあえず配置はされてるんだけど、接続してない状況です。生後、シナプスが急激に増えていって、接続されるところが増えていく。シナプスの数を数えた研究がありまして、新生児の時期から生後6カ月から12カ月にかけて急激に増えて、その後、また減っていくと分かっています」

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 ほうっ、と驚く。シナプスの形成はこの時期、非常にさかんで、視覚野だけでも1秒間に10万個のニューロンが作られているそうだ。しかし、それがすぐにピークに達して、そこから先は減る一方とは……。

 もっとも、これは単純に減るばかり、というわけではなさそうだ。

「実際に我々が生きている間、この時期の後でもやはりシナプスは形成されています。それに対してシナプスが刈り込まれるということもダイナミックに起きているので、増減のバランスで、減っていくことになるわけです。最初はつくられる量が圧倒的に多いけれど、それがだんだん逆転するわけです」

 単純に減るばかりというとなにか哀しい気分になるが、大人でも新しいシナプスを作ることが出来るという情報は希望が持てる。なにか切実な必要に応じて、我々の脳は、いつになっても「変わる」ことができると思えるから。

本誌2015年1月号でも赤ちゃんの脳の劇的な発達を紹介した特集「愛が育てる赤ちゃんの脳」を掲載しています。Webでの紹介記事はこちら。フォトギャラリーはこちらです。ぜひあわせてご覧ください。