第1回 赤ちゃんの脳の構造はほとんど完成している

東京大学大学院教育学研究科の多賀厳太郎教授。(写真クリックで拡大)

「そもそも脳が最初まっさらなのか、それともかなり構造化されているのかっていうのは、この分野の大きな問いなんですよね。その上で、現時点では、少なくとも新生児として生まれてくる子どもの脳っていうのは、むしろ極めて構造化されていて、いろんな意味で既に機能(ファンクション)しているとされています。まっさらなハードディスクのようなものというよりも、もう活き活きと人間としての機能を発揮している最中という、そういうイメージが強いんです」

 厳密にはなにをもって「まっさら」とするか定義しないといけないのだろうが、少なくともぼくが素朴に聞いた問いへの回答は、「まっさらどころか、すでに構造化して、機能している」なのだった。

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 たしかに、新生児でも、心臓は動いているし、呼吸もするし、胃腸から栄養を吸収する。そういう機能は最初から働かなければならないのだから、「構造化し、機能している」のは当たり前だ。ぼくは最初そのように受け取った。つまり、認知など、人の高次機能は、また別の話なのではないか、と。

「実は、我々が高次な認知活動とか精神活動だと思っているものが、食べるとか寝るとか、そういう非常にベーシックな生命維持活動をベースに発達してるので、そこはあんまり切り離せないんです。例えばこうやって会話をして、お互いの意図を伝え合ったりとかすることも、すごくベーシックなものがベースになっています。母親と赤ちゃんが見つめあったりとか、お互いに接触しあったりとか、そういうこととかなり連続的になってるんではないかと思われています」

 どうやら、ぼくは大いに勘違いをしていたようだ。抱いていた先入観を、それこそ「白紙」に戻して、耳を傾けなければならない。

 赤ちゃんの脳が、「すでに構造化して、機能している」というのは、もう少し具体的に言うとどういうことなのか。