「日本と違って、ボラはアイスランドの定番菓子というわけではないんですよ。ボルダーグルの時期だけのお菓子なんです」。1年に1度、人々の生活に現れるシュークリーム。なんだか余計、わくわくしてくる。

 ボラはパン屋などで買う場合もあるが、家で作る人も多い。作り方は「とにかくとてもシンプルなんです」とハルドルさん。生地の材料は、小麦粉、バター、水、卵のみ。パンタイプはこれにイースト菌や牛乳、砂糖が加わる。ちなみに、パン屋やスーパーではボラの皮だけを売っているので、好みの具材と合わせて手軽に「家庭の味」を作ることもできる。「一番オーソドックスなボラには、チョコレートがトッピングされていて、中に生クリームとジャムが入ってるんです」と彼は教えてくれる。

 ジャムは苺が大定番。「その他にブルーベリーやルバーブもポピュラーです」とハルドルさんが続ける。日本ではまだ珍しいフキのような野菜ルバーブのジャム。これが入ったシュークリームなんて、今まで想像もしませんでした。「パン屋で売っているものは、大きめで生クリームがたくさん入っているなどゴージャスなので食べてもせいぜい1、2個。でも、家で作るボラは小ぶりなので、6~7個食べたりしますね」。甘党ではないというハルドルさんが好きなのは、ジャムなしで、チョコレートと生クリームだけの甘さ控えめボラだそう。

 アイスランドのある老舗雑誌のレシピを見て、苺ジャム入りボラを作ってみた。ジャム入りシュークリームは初体験だったが、これが想像した以上に美味しい。まろやかなクリームの味だけでなく、果実の爽やかな香りが立ち上り、味わいが広がる。使ったのは日本のジャムだったので、なんとなくジャムバタートーストのような子どもの頃よく食べた懐かしい味を彷彿としたが、使うジャムによって香りも味わいも異なってくるはず。これが外国製や別の素材のジャムなら、見える風景は全く別物だろう。この次はルバーブジャム入りも作ってみなくっちゃ、絶対に!と心の中で思ったのでした。

 実はハルドルさんが、「アイスランドのお菓子」といってまず思い浮かべるのは、ボラとは別のお菓子だった。「クレイナ」と呼ばれるドーナッツだ。ねじるという意味で、菱形の生地に切れ目を入れてくるんとねじった形をしている。

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