第117話 オリバー爺さんの森からの授業
私はしばらくそのムースの足跡を見つめると、それに背を向けてスノーモービルに飛び乗った。
やはり、ここが人間と野生との境目なのだ。
これ以上無理して前進することは、その境を侵すことにもなるのだ。
私は未練も心残りもなく、スノーモービルのアクセルを握り、走り出した。
トーニャが言っていたとおり、一晩で道が固まり、走りやすくなっていた。
到底登れないだろうと思っていた急な坂の雪も硬く締まり、スノーモービルがしっかりと雪面を捉えていく。
途中、丘の上にある罠師の避難小屋に寄り、トーニャはその屋根に上って、無線アンテナを立てて、今回のチャレンジの断念を、周囲の住人たちに伝えた。
そしていつか、再び必ず、オリバー爺さんのソッドハウスを見に行けることを、深く願った。
たとえ朽ちて、森の土に戻ろうと、いつかきっと。
長い道のりをひた走り、ロッジに戻って来ると、すっかり夜になっていて、スティーブが温かいスープを作って待っていてくれていた。
そして彼は、その夜、こんな話をしてくれた。