第117話 オリバー爺さんの森からの授業

 とりあえず解けたものから口に入れて朝食を済ませると、私たちは野営を片付けて荷作りを始めた。

 けれど今度は、新たな問題が私たちに立ちはだかった。

 引き返そうにも、この森の細道では、スノーモービルをぐるりとUターンさせる十分な幅がないのである。

 大雪原を走るには有効なスノーモービルも、森の細道では、まったく融通が利かないのだ。

 こういうことに備えてトーニャは手動ウィンチを持ってきていて、ウィンチにつけられてあるワイヤーの片方を太い木に括り、もう片方をスノーモービルのフックにかけた。

 そして、そのワイヤーをウィンチでコキコキと手動で巻き取って、スノーモービルの向きを変えていくのだ。

 しかしこれが、絶望的に遅い。

 ウィンチをコキッとやる度に、巻き取るワイヤーの長さは、たった1センチずつほどで、スノーモービルの向きも、ため息が出るほどに、ほとんど変わらない。

 それでもトーニャは諦めず、私たちは交代でウィンチをコキコキし続けて、ようやく2時間ほどかけて、2台のスノーモービルの方向転換を済ませた。

 エンジンをかけて、「さあ、帰ろう」というそのとき、私は走り出そうとするトーニャを止めた。

 後ろを振り返って、行くはずだった道に目をやると、遠くへと続く、一筋のムースの足跡がつけられていた。

 まるで、「ここからは、野生だけよ」と言わんばかりに。

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