デンマークの発電所で荷下ろしされる木質ペレット。アメリカ国内では、ヨーロッパへの輸出へ向けて、製造が急増している。(Photograph by Ingrid Morales, Bloomberg via Getty)

 アメリカ南部の森の奥深く、樹木の屑が静かな、けれど論争的なエネルギーブームの火付け役となっている。木質ペレットと呼ばれるバイオマスエネルギーだ。アメリカ北東部で長いこと家庭用暖房燃料として利用されてきた木質ペレットは、最近になって新たな市場で急速に需要が高まっている。

 再生可能エネルギーの拡大を模索するヨーロッパが、発電に利用するために木質ペレットをかつてないほど大量に輸入し始めたのだ。おかげでアメリカのペレット産業は大きな変貌を遂げ、昨年のバイオマス輸出量は2倍に増加した。

 輸出量の半分以上はイギリスへ向かう。イギリスの電力会社ドラックスは、6カ所の発電所のうち3カ所を、石炭に代わって木質ペレットの燃焼に使えるよう改装した。また、アメリカに支社を置き、本国の発電所へ送るペレットを製造するために、ルイジアナ州とミシシッピー州に2つの製造工場を建設、来年操業を開始する予定だ。

 しかし、この新たなブームに批判的な見方もある。今のところ、石油や天然ガスの生産増加で騒がれたほど新聞見出しのオンパレードや抗議運動が巻き起こっているわけではないが、産業界と環境保護団体がペレットの気候変動への影響を巡って対立しているのだ。産業界は、本来なら廃棄されるはずの木材の副産物を利用しているだけだと主張するが、環境団体は、製造量が増加すれば森林破壊につながり、環境にもよくないと反論する。

 石炭や石油のような化石燃料と違い、木は再生可能な燃料である。1本切れば、もう1本植えることができる。しかし、気候変動を食い止めてくれる木を大量に切り倒して大西洋の反対側へ運搬することを懸念する声もある。

海外で爆発的に拡大する需要

 数年前までは、アメリカで製造されていた木質ペレットの80%が国内で消費されていた。そのほとんどは、個人住宅の暖房燃料として使われている。.厳しい冬が続く近年、石油価格の高騰と安価な天然ガスの不足から、北東部では木質ペレットへの需要が記録的な上昇を見せている。

 この先10年間で世界的な需要は倍増すると見られており、ペレット業界はアメリカ南東部での事業拡大を推し進めている。南部にはアメリカの森林の40%が集中しており、長いこと製材用材、パルプ、紙の原料となる木材が生産されてきた。

 アメリカ工業用ペレット協会会長のセツ・ギンザー(Seth Ginther)氏は、ペレットの製造に使われるのは木の先端や細い枝、破損した木材など低品質の副産物だけであると主張、製材用材に使用されるような高品質の木材はペレット業者には高価すぎて手が届かず、「残りかすを拾い集めるのが精いっぱいだ」と話す。

 伐採現場では、製品となる木材は価格によっていくつかの商業用グループに分けられる。高品質の製材用材は、低品質の木に比べて数倍の値がつくため、ペレット工場へ運ばれることはまずない。

 一方、天然資源保護協会の上級リサーチスペシャリスト、デビー・ハンメル(Debbie Hammel)氏は、木材の残りかすだけを使用しているというペレット業界の言い分は誤解を生むと主張、「彼らは基本的に、よほど高価なもの以外全ての木材を使っている」としている。ペレット産業がなければ、若い木は切り倒されることなく成長を続け、二酸化炭素を吸収し、動物たちの生息地となってくれるはずであるとも指摘する。

気候変動への影響は不透明

 イギリス政府は今年7月、北アメリカの木材を使ってイギリスの電力を発電することが本当に温室効果ガスの削減につながるのかという分析を行った。それによると、ある特定のバイオマス(例えば、それがなければ伐採量がもっと少なかったであろう森林で採れた木材を使ったもの)を燃焼すれば、石炭を燃焼した時よりも多くの二酸化炭素を大気中へ放出してしまうことになると報告している。

 この報告書と合わせて、アメリカ環境保護庁より出された新たな指針を見ると、バイオマスによる二酸化炭素削減の効果をはじき出すのはそう簡単ではないことが分かる。木くずや森林で採れた植物といった、変動が激しく標準化もされていないものをどのように分類し、炭素方程式に当てはめれば良いのだろうか。

 皮肉にも、木質ペレット産業の成長による経済的および生態的影響は、その需要が横ばいになるか低下するまでは明らかにはならない。どのみち、新しい木を育てるのには何年もかかり、森林研究もそれだけ時間がかかる。

「まだ分かっていないことが多すぎる。はっきりとしたことが言えるには20年はかかるだろう」と、アメリカ林野局の研究経済学者カレン・アブト(Karen Abt)氏は話す。

文=Christina Nunez