人類の歴史で最も偉大な発明は? 一つの答えは「アート」、すなわち抽象的な概念に具体的な形を与える表現方法だ。洞窟壁画や遺物からその起源を探る。

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人類はいつアートを発明したか?

人類の歴史で最も偉大な発明は? 一つの答えは「アート」、すなわち抽象的な概念に具体的な形を与える表現方法だ。洞窟壁画や遺物からその起源を探る。

文=チップ・ウォルター/写真=スティーブン・アルバレス

 スペインのアルタミラ、フランスのラスコーやショーベなど、ヨーロッパ南部には旧石器時代の洞窟壁画が残っている。はるか昔に、何の前ぶれもなく突然現れたように見える偉大な芸術は、どのように生まれたのだろうか。

 ヨーロッパ大陸に長年にわたって暮らしていたネアンデルタール人は、野蛮で芸術とは無縁であったというのが定説だった。そんな彼らを、もっと優秀な現生人類(私たちの祖先)が大陸から追い出し、洞窟壁画を手がけたと考えられていた。つまりアートの起源は現生人類にあるという考えだ。

 ところが最近、話はそれよりかなり複雑で、もっと興味深いものであることがわかってきた。始まりは例によって、人類誕生の地アフリカにさかのぼる。

現れては消える「アートの芽生え」

 南アフリカでは、2000年にブロンボス洞窟で発掘された遺物が論争を巻き起こした。幾何学模様が刻まれた赤い粘土の塊が見つかったのだ。推定年代は約7万5000年前。人類が記号を用いた証拠としては、最古とされた年代を3万5000年もさかのぼる。これ以外にも、何かの象徴や装飾とみられる遺物が、アフリカや中東の数カ所で見つかった。

 各地で突如として花開いた象徴表現には、「現れては消える」という興味深い側面もあった。顔料や幾何学模様、貝殻のビーズなどの遺物が見つかるのは、いずれも限られた地域で、数千年の期間だけ。その後は、ぱったりと姿を消す。道具についても同様だ。南アフリカでは、石と骨を組み合わせた道具の文化が二つの地域で出現したが、どちらも数千年しか続かなかった。

 そうした文化が継続して広がり、多様化するのは、アフリカやユーラシア、オーストラリアなどの広い地域で多数のアートが見られるようになった、4万年前以降のことだ。

 象徴表現は、人類の認知能力の向上や、行動の変化にもかかわる重大な発明だ。その出現は、何らかの遺伝子に“スイッチ”が入ったためだろうか。現れては消えていった経緯からみて、どうもそうではなさそうだ。

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2015年1月号でどうぞ。

編集者から

 参考文献を読んでいたら、「なぜ、洞窟壁画の動物はみな横向きなのか?」という興味深い問いが。これは、古代の人々が動物をちゃんと観察しながら絵にしていた証し。動物が正面にくるときは、すなわち自分が襲われている瞬間で、観察する余裕などなかったのでしょうというお答えでした。いや、ごもっとも。(編集H.O)

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