今夜は、火の番をして、交代で寝ることになるだろう。
火を絶やさなくても、空腹過ぎて思考回路が壊れてしまっているオオカミもいれば、稀に狂犬病を発症していて、本当に狂気狂乱なオオカミもいるという。
だから、火があるからと言って、すべてが安心というわけでもないのだ。
辺りはすっかり闇につつまれ、焚き火がだんだん色濃くなってきた。
火の上で温めていた食料が、いい具合に解けてきたようで、私は揚げドーナツを手にとり、トーニャは茹でジャガイモを手にとった。
そして、一緒に口に入れたとたんに、ガツン! と歯に当たった。
「イテテテ」
まだ芯の部分が凍っていて、歯が折れそうな衝撃を喰らって、2人とも口を押さえた。
マイナス30℃ほどの世界で、石のようにカチンコチンに凍ってしまったのだから、そう簡単には解けないようだ。
けれど、私たちのお腹は、胃液の渦が、鳴門海峡のように巻いていそうなくらいに、グルグル音を鳴り響かせていて、なんでもいいから、早く胃を落ち着かせたい。
ここは、我慢……。
無になって、我慢……。
と、再び石のような食料を火に戻して、じっと火を見つめていると、トーニャがぽつりと呟いた。