第116話 森の中で朽ちてこそ、定めか……

 今夜は、火の番をして、交代で寝ることになるだろう。

 火を絶やさなくても、空腹過ぎて思考回路が壊れてしまっているオオカミもいれば、稀に狂犬病を発症していて、本当に狂気狂乱なオオカミもいるという。

 だから、火があるからと言って、すべてが安心というわけでもないのだ。

 辺りはすっかり闇につつまれ、焚き火がだんだん色濃くなってきた。

 火の上で温めていた食料が、いい具合に解けてきたようで、私は揚げドーナツを手にとり、トーニャは茹でジャガイモを手にとった。

 そして、一緒に口に入れたとたんに、ガツン! と歯に当たった。

「イテテテ」

 まだ芯の部分が凍っていて、歯が折れそうな衝撃を喰らって、2人とも口を押さえた。

 マイナス30℃ほどの世界で、石のようにカチンコチンに凍ってしまったのだから、そう簡単には解けないようだ。

 けれど、私たちのお腹は、胃液の渦が、鳴門海峡のように巻いていそうなくらいに、グルグル音を鳴り響かせていて、なんでもいいから、早く胃を落ち着かせたい。

 ここは、我慢……。

 無になって、我慢……。

 と、再び石のような食料を火に戻して、じっと火を見つめていると、トーニャがぽつりと呟いた。

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