石油・ガス産業が直面するメタン問題

2014.12.11
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ガスの焼却処分は、エネルギー産業によるメタン排出源の一つに数えられる(ノースダコタ州で撮影)。目に見えない漏出源も多く存在する。 (Photograph by Shannon Stapleton / Reuters)

 天然ガス施設の貯蔵タンクやパイプは一見何の迫力もないが、赤外線カメラを通すと火災現場のような様相を呈している。もうもうと立ち込めるのは、大気中に放出されるメタンガスだ。

 アメリカのバラク・オバマ大統領は二酸化炭素やハイドロフルオロカーボンを含むすべての温室効果ガス排出量を2005年比で17%削減するとの目標を掲げており、石炭と石油から天然ガスへの転換が計画の中心に据えられている。だが、環境防衛基金(EDF)のマーク・ブラウンスタイン(Mark Brownstein)氏は、それだけでは不十分だと指摘する。

「天然ガスは石炭や石油よりもクリーンで二酸化炭素排出が少ない代替エネルギーとして売り込まれている」とブラウンスタイン氏。しかし、エネルギー産業からの漏出に関するEDFの調査を考慮すれば、「石炭と石油から天然ガスへの転換がもたらす恩恵は不確かだ」という。

 実際、政権が掲げる目標を達成するためには、天然ガスの主成分であるメタンを抑制する以外に方法はないとの分析結果を、ニューヨーク市の経済調査会社ロジウム・グループが報告している。

「エネルギー産業が排出量を削減しようとする動機はいくつもある」と話すのは、アメリカ石油協会のシニア政策顧問マット・トッド(Matt Todd)氏。

 その一つが経済面だ。結局のところ、ガスを無駄にすることはお金を無駄にすることと変わらない。規制の強化を支持する環境保護団体クリーンエア・タスクフォース(CATF)のアドボカシー責任者コンラッド・シュナイダー(Conrad Schneider)氏は、「漏出箇所を突き止めて修理すればガスの節約につながり、彼ら自身の利益にもなることが多い」と話す。

目に見えないメタン汚染

 EPA規制の強化にあたり、「油井からのメタン排出に対処するのは当然のことだ」とシュナイダー氏。しかし、供給プロセスの他の部分(輸送ラインや加工工場、天然ガスを油井から発電所に運ぶための設備、住宅、企業など)からの排出を削減して初めて本当の成果が得られると同氏は言う。

 こうした漏出源からの排出量は、今年だけでも800万トンに上る。テキサス大学が今週発表した研究によれば、アメリカ各地の天然ガス生産施設で稼働する空気圧装置(加圧天然ガスで動く制御装置)のうちわずか19%から排出されるメタンが、すべての空気圧装置から大気中に排出されるメタンの大部分を占めるという。一部の装置を改良することで大きな効果が得られる可能性を示唆する内容だ。

 企業によるメタン漏れの監視も以前ほど難しくはない。赤外線カメラや移動式モニタリングシステムといった技術の進歩は「漏出の特定、対処に大変革をもたらした」とCATFのシュナイダー氏。

自主的措置だけでは不十分

 2012年以降、一部の汚染規制の対象は新しい石油・ガス施設に限られてきたが、EPAが既存の施設にも規制対象を拡大するかに注目が集まっているとシュナイダー氏は言う。

 現在検討されている新たな規制では対象範囲が広げられ、より多くの石油及び天然ガス施設が規制の対象となる可能性がある。

 EPAはメタン削減戦略として、複数の企業が参加する天然ガスSTARプログラムを実施している。しかし、プログラムが始まった1990年代にEPAが指摘した漏出問題の多くは未だ解決されていないにもかかわらず、近年は参加企業が減少傾向にある。

 メタン排出量削減に向けた業界の努力は称賛に値するが、「自主的措置だけで目標を達成することは不可能だ」とシュナイダー氏は話す。「エネルギー産業全体で問題に取り組むためには、新たな規制を設けるしかない」。

文=Christina Nunez

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