Sarcophilus harrisii
あくびをするタスマニアデビル
Photograph by Ian Waldie/Getty Images
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早わかり

分類: 哺乳類
保護状態: 絶滅危惧
食性: 肉食
寿命: 最大5年
体長: 51~76センチメートル
体重: 4~12キログラム
敵と対峙したタスマニアデビルは、まるで脅えていないふりをするかのように目の前であくびをしてみせる習性を持つ。

成人男性(180cm)との比較

分布

プロフィール

 有名なバッグス・バニーも登場するアメリカのアニメ「ルーニー・テューンズ」の中で描かれているタスマニアデビルは、強欲な愚か者であり、気性が激しく、いつも唸り声を上げている。このキャラクターは大幅に誇張されているが、実際のタスマニアデビルにも同じような側面がないわけではない。

 気性の荒さで有名なタスマニアデビルは、捕食動物との対峙や、メスの奪い合い、あるいはエサを取られないよう守るときなどは闘争心をむき出しにする。背筋が凍るようなしゃがれた唸り声を出し、歯をむき出しにして相手に突進する。タスマニア島へヨーロッパ人が移住を始めた頃、彼らはそのような威嚇行動を目の当たりにして「デビル」という名前を付けた。

 この非常に攻撃的な哺乳動物は茶色や黒の硬い毛で覆われており、輪郭はずんぐりしていてクマの子どもに似ている。ほとんどの個体は胸元に白い模様があり、体側か臀部には淡色の斑紋がある。前脚に比べて後ろ脚が短いためバランスが悪く、歩き方はブタのようでぎこちない。

 タスマニアデビルは世界最大の肉食性有袋類であり、最大体長76センチ、体重12キロまで成長するが、実際の大きさは生息域やエサの豊富さによって大きく異なる。体の割に大きな頭部は鋭い歯と強靱なアゴを備えており、体重比で見れば、噛み砕く力は哺乳動物の中でもトップレベルだと考えられる。

 また、完全なる肉食であり、ヘビ、鳥、魚、昆虫といった小型の獲物を捕食するが、数頭で死肉をあさることも多い。タスマニアデビルが最も凶暴になるのは、大型動物の死骸を見つけたときに繰り広げられるポジション争いである。栄養状態の良いタスマニアデビルは、ほかの有袋類と同じように尻尾が脂肪を蓄えて膨らんでいる。

 タスマニアデビルは夜行性で、単独で行動する。日中は空洞になった倒木の中や、洞窟、ほかの小動物の巣穴にこもって過ごし、夜になるとエサを探して歩き回る。長いヒゲや優れた嗅覚と視覚を利用して、捕食動物との遭遇を避け、獲物や死肉を探す。とにかく口に入る物はほとんど何でも食べ、見つけたエサは毛から内臓、骨まですべてを食べ尽くす大食漢である。

 母親は約3週間の妊娠期間を経て、20~30匹の非常に小さな子どもを産む。その大きさは干しぶどうほどしかない。赤ん坊は母親の体をよじ登って袋に入るが、乳首が4つしかないため、現実にはほんの数匹しか生き残れない。子どもは約4カ月で袋から出るようになり、通常は6カ月経つまでに乳離れして、8カ月までには完全に親離れする。

 タスマニアデビルはかつてオーストラリア全土に多くの個体が生息していたが、現在の生息地はタスマニア島だけである。島全体が生息域となっているが、特に沿岸の低木地や森林を好むようだ。オーストラリア本土でこの動物が絶滅したのは、アジアから連れてこられたディンゴというイヌが原因であると生物学者たちは考えている。

 19世紀後半には、家畜を襲う害獣という誤った認識が農家の間で広まり、タスマニアデビルの駆除が奨励されて多くの個体が処分された。このときの農家の認識は正確ではなかったが、ニワトリなどの家禽を襲っていたことは事実である。1941年、激減したタスマニアデビルを政府は保護動物に指定し、それ以来この動物の個体数は着実に増加してきた。

絶滅危惧種

 しかし、1990年代半ばには種の存続を脅かす病気が発見され、これまでに数万匹が感染によって命を落としている。急速に被害が拡大しているこの病気は、デビル顔面腫瘍性疾患(DFTD)と呼ばれる珍しい接触伝染性の癌(がん)である。感染すると口元や頭部に大きなこぶが形成され、エサを食べることが困難になる。そのため、この病気に感染した個体は最終的に餓死してしまう。専門家は種の絶滅を防ぐため、伝染の及んでいない個体群の隔離を進めると同時に、飼育下繁殖プログラムを強化している。タスマニアデビルは現在、この病気の発生を重く見たオーストラリア政府により絶滅危惧種に指定されている。

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