2009年、大地震によって壊滅的な被害を受けたイタリアのラクイラ県オンナ村。地震の直前、多数の住人が明るい光を目撃したという。(Photograph by OLI SCARF, GETTY IMAGES)

 地震発生に先だって謎の光が輝く「地震発光現象」は、比較的まれではあるが、世界各地での目撃例が伝えられている。「UFOではないか」とうわさになる場合もあるが、ついに原因が解明されたという。

 研究チームの一員で、アメリカにあるサンノゼ州立大学とNASAエイムズ研究センターに所属する物理学者フリーデマン・フロイント(Friedemann Freund)氏は、「一口に地震発光現象といっても、決まった形状や色があるわけではない」と話す。

「地面からくるぶしの高さまで上昇する青味がかった炎のような光や、空中を数十秒から時には数分ほど漂う光の玉などの目撃例が多い。雷によく似ているが上空からではなく、地面から伸びる一瞬の閃光(せんこう)が最大200メートルに達したという証言もある」

歴史的な大地震と発光現象

 地震の前や最中に起きる謎の発光現象については、何世紀も前から言い伝えられてきた。

 発光のタイミングはさまざまで、例えば2009年、イタリアのラクイラ地震の発生数秒前に、石畳の上をちらつく直径10センチほどの炎を大勢の人が目撃している。1988年にカナダのケベック州を襲った地震の場合、その11日前に発光現象の報告が相次いだ。

 フロイント氏の研究チームによると、発光現象の記録は少なくとも1600年まで遡るという。

迷信から科学へ

「昔は宗教的な観点からの解釈が多かった。今はUFOと考える人も多い」とフロイント氏。

 まともに受け取るには信憑性に欠け、地質学者や物理学者ら専門家も学問的に取り組む対象ではなかった。

 ところが1960年代半ば、長野の松代群発地震をきっかけに状況が変わる。発光現象がカメラにはっきりととらえられ、地震活動との関連が確認されたのだ。「写真や動画に記録されるケースが急増した。監視カメラが普及した影響も大きい」

地震発光現象のメカニズム

 以来、発生メカニズムについてさまざまな説が登場したが、フロイント氏の研究チームが岩石の電荷に注目するまで決着は付かなかった。同氏によるとまず、「力が加わった玄武岩や斑れい岩に、電荷の“充電スイッチ”が入る」という。

 そこに地震波がぶつかると、岩石内の電荷が解放される。

 地質的な条件、「岩脈」という垂直構造も重要だ。マグマが垂直の割れ目に流れ込んで冷えた地盤で、地下100キロに達する場合もある。ここで玄武岩や斑れい岩が電荷を解放すると、地下から地表に向けて一気に駆け抜けていくことになる。

「電荷は結合して一種のプラズマのような状態になり、猛スピードで移動し、地表ではじけて空中放電を起こす。これが色鮮やかな光の正体だ」

 フロイント氏の説明によると、世界中で発生する地震で、発光の条件が揃うケースは0.5%未満だという。比較的まれな現象というのも頷ける。

「タイミングや場所もそれぞれ異なる。大地震の数週間前に発生する場合や、実際に揺れている最中に光ることもある。また、震央から160キロ離れた地点で観測された記録も残っているそうだ」

地震の予知に利用できるか?

 フロイント氏の研究チームは、世界規模の地震予知システムの開発に取り組んでいる。今回の研究を基に、発光現象も予知の指標の1つとして組み込まれることになるという。

「特徴的な発光現象が3つ、4つと続いたら、地震が発生する可能性が高いといえるだろう。頻繁に目撃できる訳ではないが、もし突発的に光った場合には十分注意してほしい」

 地震予知に利用する意見には懐疑的な研究者も多いが、フロイント氏は、「もちろん課題はまだあるが、光を見て避難して助かった人も実際にいる。今後は実 験室で再現する研究に取り組むつもりだ」と方向性には自信を持っている。「発光の詳細を理解し、ほかのさまざまな指標と組み合われば、予知の精度を高めることができるはずだ」

 今回の研究結果は、「Seismological Research Letters」誌1月・2月号に掲載されている。

文=Brian Clark Howard