「今、下りて来た坂を登り帰ることはできないわ……」

「どうして?」

「開いたばかりの道は柔らかいから、一晩、放射冷却にさらして固まった状態にならないと、登ることができないものなのよ」

「え???」

 なんと役立たずな……。

 石油を使って、臭い排気ガスを吐きながら、戦車のようなスノーモービルは、前進もできなければ、引き返すこともできないのだ。

 どうせ引き返せないのならば、少しでも前進しようと、私たちは進み続けるが、再びスタックを繰り返して、50メートルほど進んだところで、ようやくトーニャが、その一言を口に出した。

「やっぱりギブアップね……」

 私も同感だった。

 そうと決まれば、すぐにも野営の準備をしないと、暗闇がやって来る。

 ところが荷物の中を探ってみると、私たちはテントを積んでいなかったのだ。

 泊まる予定の廃墟となっているキャビンまで、どうにか行けると思っていたのだった。

 それが誤算だった。

 けれど、そもそも燃料など、重い荷物を多く持っていかなければならないので、かさ張る冬用の野営テントは、やっぱり置いて来ていただろう。

「野宿だね……」

「そうだね……」

 私たちは顔を見合わせた。

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