「ドント、ギブアップ!」

 そうは言っても、スノーモービルがまっすぐに進んでくれないのよ……。

 よく考えると、トーニャよりも私のほうが、スタック回数が多い。

 それは、トーニャは体重が重く、牽引している橇の荷も重量があるために、重心が低く、ずっしりと安定感があるからだ。

 私はというと、体重が軽い上に、荷も軽いものばかりなので、スノーモービルがしっかりと雪を捉えてくれないのである。

「トーニャ、これは無理だよ……」

 オリバー爺さんのキャビンまでの距離を考えると、私は途方に暮れてしまった。

「どのくらいの地点まで来ていると思う?」

 尋ねてみると、トーニャは、

「今夜泊まる中間キャビンまでの、3分の1も来ていないわね」

「え、まだまだ先? もう日が沈みかけているよ」

「そうね……」

 私は言った。

「トーニャ、引き返そう。これは無理だよ」

 諦めて引き返すことも、ときには正しい判断だ。

 ところがトーニャは、「戻れない」と言う。

「なぜ?」

 私は、トーニャの負けず嫌いの性格が、判断の邪魔をしていると思った。

 けれどそれは違っていた。

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