祖母は新潟で生まれ、戦争末期に祖父と知り合って群馬に嫁いだ。当時は珍しい恋愛結婚だったらしい。「おじいちゃんに教わって一生懸命つくり方を覚えたんだよ」と祖母は笑う。昨年、96歳で大往生した祖父のコンニャク、食べてみたかった。

 すりおろしたコンニャク芋は少しにごったピンク色をしていた。これが白っぽくなるまで、木のヘラでかき混ぜながら弱火で煮る。けっこうな重みがあり、ちょっとした力仕事だ。ヘラを持ち上げると立つくらいの固さになったら、薄い石灰水(水酸化カルシウム)を投入する。

コンニャク芋をすりおろして(左)、ヘラを持ち上げると立つくらいになるまで弱火で煮る(右)。(写真:中川明紀)(写真クリックで拡大)

 コンニャク芋にはグルコマンナンという食物繊維の一種が含まれている。これには糖やコレステロールの吸収を抑えたり、有害物質を排出させたりする働きがある。コンニャクが「胃のほうき」と言われて、栄養素がほとんどないのに健康食品として扱われてきたのは、この成分があるからだ。

 グルコマンナンはアルカリ性物質を加えると変化して固まる性質があるため、石灰水は凝固剤の役目を果たすらしい。昔はアクそのものを凝固材として使っていたそうだ。しかしこの石灰水の按配が難しいようで、「入れすぎるとボロボロと分裂してまとまらなくなっちゃうんだよ。いつも目分量でやるからよく失敗してね」と祖母。そこで失敗しないように慎重に入れたが、祖母のコンニャクより固くなってしまった気がする……。手順はわりと単純なのに、難しいとはこの絶妙な加減か。

 トレーに流し込んで成型したら、アクを抜くために1時間ほど茹でる。「昔は囲炉裏で茹でていたのよ」と母が言う。さらに何度か水を替えながら、半日ほど水にさらしてしっかりとアクを抜く。コンニャク芋の強烈なエグミを取って食べられるようにするため、先人が試行錯誤しながら確立したつくり方なのだ。

石灰水を入れたところ(左)。トレーから外してゆでた状態(右)。食べる直前にもまたゆでる。(写真:中川明紀)(写真クリックで拡大)

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