プリントや本も飛ぶように売れていき、ジムは客からの質問や、サインの依頼に応えて大忙しでした。

 休憩の合間に、ぼくは他の写真家のブースも覗いてみたのですが、どこもそれなりに盛況でした。

 アメリカの人々は、作家が有名無名にかかわらず、自分が気に入ったものは、すぐに買っていくというのが当たり前のようでした。

 日本に比べれば、家が大きく、リビングからトイレにいたるまで、飾る場所にことかかないというのも、その購買欲を支える大きな理由なのかもしれません。

 じつは、ぼく自身、その様子をこの目で見るまでは、写真展にいくことはあっても、それは鑑賞するもので、まさか自分で購入して飾るという発想はありませんでした。

 が、こうしてきちんとお金を出して飾る習慣があるということは、いいアーティストを育む上で、とても大切な土壌となっているのだろうと思いました。

 夕方になり、あらかじめ決められた時間が来ると、ようやく店じまいです。

 フェスティバルは3日間連続なので、あしたもまた、長い1日が続くことでしょう。

 作品を翌日まで保管するため、ハイジの家に運ぶのを手伝ったあと、ぼくはジムの車に乗って、レイヴンウッド・スタジオの方面へ、いっしょに帰ることになりました。

 30分ほど走って、スタジオまでもう間もなくというところで、森がすこし開けた場所を通り過ぎました。

 そのとき、ジムは、何かに気づいて、声を出しました。

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