第83回 トム・ブラウンの教え

 アートフェスティバルというだけあって、画家、陶芸家、写真家、そして手芸や木工の作品、さらには手づくりのジャムや石けんを作る人にいたるまで、地元のアーティストや職人たちが、それぞれの作品を持ち寄ってきて販売します。

 参加者にとってこのフェスティバルは、自分の仕事の発表の場であると共に、貴重な収入の機会となっているのです。

 ジムのようにすでに有名となった写真家が出店することは、すこし場違いな雰囲気もあったようですが、イリーに拠点を移して間もなく、娘もまだ幼かったハイジにとって、ギャラリーの運営を軌道に乗せることは、大切な目標でした。

 いよいよフェスティバルの当日がやってくると、イリーの町の真ん中に位置する、芝生に覆われた公園は、それぞれのアーティストが設営した、まっ白な三角屋根のテントに埋め尽くされました。

 一画にはフードコーナーが設けられ、ホットドッグやフレンチフライ、ピタ・ギロス、ジュースやアイスクリーム、綿菓子などの屋台が並び、イベント会場からは、ミュージシャンたちの演奏が聞こえてきました。

 ハイジと夫のブレットにまじって、ぼくも前日のうちから設営を手伝い、当日の朝にはテントに集まって、額装された写真を壁に飾り、販売するためのプリントや本、ポストカードやグリーティングカードをテーブルの上に並べました。

 夏の日射しはまぶしく、木々の葉も芝生も青々と茂り、大人も子供も、みんな笑顔でおしゃべりしながら、テントの立ち並ぶ道を通り過ぎていきます。

 どこもかしこも、フェスティバル特有の高揚感に包まれていて、ぼくも久しぶりのにぎわいに、胸がわくわくしてくるのを感じました。

 ジムのブースは、やはり人気があって、オープンしてからすぐに、人だかりができていました。