涙なくして語れないタマネギの歴史

機能性食品としてのタマネギ

 今日、タマネギはスパゲッティーのソースやシチューに風味をつけるだけでなく、治癒力や健康増進作用も備えた「機能性食品」としてもてはやされている。タマネギは細菌や真菌の成長を抑制し、その抗酸化物質はわれわれをがんや心臓血管疾患から守ってくれる。タマネギに含まれる各種の化学物質は、アレルギーや喘息から糖尿病まで、多くの疾患を軽快させることがわかっている。ビタミンやミネラルにも富んでいる。

 単なる食材として見ても、タマネギなしの暮らしは考えられない。タマネギは世界各国の料理に欠かすことのできない食材だ。タマネギの食材としての有用性を示す最もよい例は、18世紀のフランスのレストランでの逸話である。腹をすかせた客が来たが、食品貯蔵庫にはめぼしい食材が残っていなかったので、シェフは革手袋を細切りにしたものをタマネギ、マスタード、酢と合わせてソテーして出したのだ。この料理を食べた客はおいしいと言って喜んだという。

 われわれは近い将来、タマネギに痛めつけられることなく、その恩恵を享受できるようになるかもしれない。数年前、ニュージーランドの作物食品研究所(現在の植物食品研究所)のコリン・イーディーらが、日本の共同研究者とともに涙の出ないタマネギを開発したのだ。催涙物質を作る酵素の遺伝子を働かなくする「遺伝子サイレンシング」という手法を用いて作り出されたタマネギは、従来のタマネギと同じように味がよく、栄養分も豊富に含んでいるが、われわれに涙を流させるsyn-プロパンチアール-S-オキシドは作らない。

 もうタマネギに泣かされなくていいのだ。そうなったら私は嬉しいが、皆さんはどうだろう?

(文=Rebecca Rupp/訳=三枝小夜子)