トーニャは頭を悩ませた末に、スノーモービルで行くことに決めた。

 やはり犬たちとて、心と体のケアが必要な大切な命だ。無理はさせられない。

 さっそく準備をはじめて、思いつくものを全て揃えてみる。

 いつもの犬橇行とは違って、今回は道なき道を行く道具を積まなければならない。

 雪を掻き分けるためのスコップ、藪を払うアックス、倒木を切るチェーンソーまで。

 その上、往復分のスノーモービルの燃料だ。

 その重量を、トーニャは自分のスノーモービルで牽引する橇の中に積み込んだ。

 私の方はというと、スノーモービルの運転に慣れていないので、荷橇の牽引はしないで、後部の荷台に荷物を積み上げて括りつけることにした。

 出発は翌日。

 私たちがいない間の犬たちの面倒は、スティーブが見てくれることになった。

 朝は、起きてすぐにスノーモービルのエンジンをかけて暖機をする。

 夜の間の放射冷却で、スノーモービルはキーンキンに冷え切っていた。

 金属部分の表面は霜が降りたように凍っていて、指で触るだけでも皮膚がペタリとくっついて、剥がそうとすると、皮がむけてしまいそうだった。

 冷えたエンジンは、一発ではかからず、チョークを引いて、3回ほどスターターの紐を勢いよく引いたところで、ようやくエンジンがかかった。

 ロッジに戻ってくると、トーニャと共にオリバー爺さんに電話をかけて、これから出発することを伝えた。

 電話の奥で、弱々しい息づかいが聞こえていたけれど、オリバー爺さんは少し嬉しそうな声で、「十分に気を付けなさい」と言った。

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