第6回 海底に沈む遺跡を究める「水中考古学」に刮目せよ!

 水中の遺跡調査でも、まずは最初に歩くことから始める。当たり前とはいえ、地道な話である。同時に楽しそうでもある。その時の学生さんたちは、何かを始める時の興奮をたっぷり味わっただろう。

「とにかく地元の漁師さんとかダイバーの人に会って、話をうまく聞き出してくる。そういうの、人類学者は得意なもんですから。それで結構、新しい遺跡があるのが分かりました。例えば初島沖。ここの海底に徳川の瓦があるという情報を熱海での調査時に仕入れたので、訪ねてみたらちょうどお祭りをやっていたんです。そこでそこにまぎれて地元の方と仲良くなって、この情報が本当であることを確認できました。海底に瓦がたくさあって、徳川の葵の紋様がついてるって」

徳川の瓦が相模湾の初島沖に沈んでいる!(写真提供:アジア水中考古学研究所)(写真クリックで拡大)

 東伊豆の初島沖に葵の紋様の瓦! なにかそそられるものがないだろうか。ぼくは、とってもそそられる!

 そこには、どんな徳川由来の建物があったのだろうか。

「建物ではなくて、船ごと沈んだというふうに考えられています。江戸城って何度か火事とかで修復の必要があって、その際に大阪のほうから瓦を船で運んでくるところだったと。きれいに積まれた状態で出てるんで、恐らく船ごと沈んでるだろうと。一部、船材みたいな木材が露出してるんですよ。本当に船が沈んでた場合、保存状態のいいものかもしれない。近世の船が、そういう形で水中から出てきたものっていうのはまだ1点もないので、価値が非常に高いというふうに考えているんですね」

 実は小野さん達が情報を仕入れた時点で、すでに何点か瓦が引き上げられていて、地元では瓦のまわりに夜な夜な侍の幽霊が出るとか、恐れられていたという。海底の遺物というのは、神秘的というのと同時に、冥界に通じるような独特のほの暗さがある。それは、よく分かる気がする。

きれいに積まれた状態の瓦。船ごと沈んだと考えられている。(写真提供:アジア水中考古学研究所)(写真クリックで拡大)