「日本では考古学って、歴史学の1分野になっているんですけど、世界的にはむしろ人類学の中の位置づけで、基本的には1つの分野なんです。そんな中で、日本の考古学の方法を学ぶのは意義がありました。日本で掘ってみると、面で掘っていくことがいかに大事かっていうことをたたき込まれます。面と面の違い、層と層の違いがいかに大きな違いかっていう。それをやっぱり実感できるんですよ。でも、私がオーストラリアでポスドク研究をしていた時に感じたのは、彼らの発掘は点で掘るんです。出てきたものの絶対年代は測定できるからそれでいいだろうって。でも、それでは、年代は見れても、いろいろな情報が失われる。例えば、広い範囲にまたがる住居址なんかがあった場合、点で掘っているとわかんないですね」

 小野さんは、オセアニアのフィールドを目指すことで、日本の「考古学」よりも広い「人類史」を扱う学問に進んだわけだが、日本で受けた教育は発掘の手法などをとっても、有利に働いたフシがある。オセアニア考古学・人類学で、見逃されてきた魚の椎骨を使った同定で、新たな視野を開いたのも日本仕込みの繊細さ丁寧さを想起させる。

 なお、オセアニア考古学は、かつて、アメリカ、ハワイのビショップ博物館が大いに研究をしていたけれど、今ではオーストラリアからの研究者が多いそうだ。距離的に近い点もあるだろうし、また、オーストラリアという国が、今、自らのアイデンティティを求めて「オーストラリア人のルーツ」のようなものを探しているから、というふうにぼくは感じている。

 では、日本で数少ないオセアニア考古学の専門家である小野さんが語る、この研究の魅力とは?

「航海術にしても、海の適応にしても、いかにいろんな新たな局面に我々、ホモ・サピエンスが対応してきたかというのを、最も如実にあらわしているのがこの辺の海だと思います。海って、人間からすれば一番過酷な環境でもあるんです。もともと海洋生物じゃないですから。そういう人類が、海に一番近いところ、その極限でどんなふうに生きてきたのか、その生き様みたいなものを、過去も含めてアクセスできる、アプローチできる。それがこの地域の海洋考古学の面白いところだって思っています」

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つづく

小野林太郎(おの りんたろう)

1975年、島根県生まれ。東海大学海洋学部海洋文明学科准教授。博士(地域研究)。2003年、上智大学外国語学研究科地域研究専攻博士課程単位取得後、日本学術振興会特別研究員(国立民族学博物館)、総合地球環境学研究所研究プロジェクト推進支援員,日本学術振興会海外特別研究員(オーストラリア国立大学)などを経て,2010年より東海大学海洋学部海洋文明学科に所属。専門は海洋考古学、東南アジア地域研究、オセアニア考古学。『海域世界の地域研究 (地域研究叢書 24)』(京都大学学術出版会)などの著書がある。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社)(『雲の王』特設サイトはこちら)、NHKでアニメ化された「銀河へキックオフ」の原作『銀河のワールドカップ』『風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)など。最新刊は、ニュージーランドで小学校に通う兄妹の冒険を描いた『続・12月の夏休み──ケンタとミノリのつづきの冒険日記』(偕成社)。
本連載からは、「睡眠学」の回に書き下ろしと修正を加えてまとめたノンフィクション『8時間睡眠のウソ。 ――日本人の眠り、8つの新常識』(日経BP)、「昆虫学」「ロボット」「宇宙開発」などの研究室訪問を加筆修正した『「研究室」に行ってみた。』 (ちくまプリマー新書・2014年12月上旬刊行予定)がスピンアウトしている。

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