「私もオセアニアのいろんなところで発掘に参加していて、これは国立民族学博物館の印東道子先生と一緒に調査したミクロネシアの離島の話です。2000年ぐらい前からかなり最近まできれいに連続的に出るいい遺跡なんですけど、ここで出た骨っていうのは、ほとんどサメとマグロ。硬骨魚類に限ると、マグロなどのサバ科の骨が圧倒的に多かったんですよ。で、これを無視して残った魚だけで当時の人たちの漁撈活動とかを再現すると、全然違った話になっちゃうんです」

 ミクロネシアのファイス島にある遺跡での話だ。出てきた硬骨魚類(つまりサメやエイなどの軟骨魚類は除いている)の椎骨をサバ科、ハタ科、ブダイ科で比べると、9割以上(標本215のうち193)がサバ科だった。

「サイズの推定なんかもやって比較しています。サメはやっぱり1メートルから2メートル以上のクラスのものがかなり出ていますし、マグロ類にしても40~50センチぐらいのが結構一般的に出ているので、そうすると1匹あたりの重量っていうのが、肉量も含めて考えると、沿岸性の魚よりも圧倒的に多いんですね」

 もしも、捕獲される数が近かったとしても、マグロ類やサメ類のような外洋魚種は体も大きく、より食肉としての貢献度が高いかもしれない(ましてや、この場合、数も圧倒的だ)。とするなら、それを無視していると、復元すべき人々の暮らしはまったく違ったものになる。

「本当にその当時の人たちにとって重要だった魚はどっちなんだろうかっていう話になったときに、椎骨見ないとあかんみたいな話を、英語で何本か書いて、きわめつけがファイス島や東ティモールの論文だったんです。そのせいか、ここ最近、ようやくオセアニア考古学の人たちも椎骨を見るようになってきました」

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つづく

小野林太郎(おの りんたろう)

1975年、島根県生まれ。東海大学海洋学部海洋文明学科准教授。博士(地域研究)。2003年、上智大学外国語学研究科地域研究専攻博士課程単位取得後、日本学術振興会特別研究員(国立民族学博物館)、総合地球環境学研究所研究プロジェクト推進支援員,日本学術振興会海外特別研究員(オーストラリア国立大学)などを経て,2010年より東海大学海洋学部海洋文明学科に所属。専門は海洋考古学、東南アジア地域研究、オセアニア考古学。『海域世界の地域研究 (地域研究叢書 24)』(京都大学学術出版会)などの著書がある。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社)(『雲の王』特設サイトはこちら)、NHKでアニメ化された「銀河へキックオフ」の原作『銀河のワールドカップ』『風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)など。最新刊は、ニュージーランドで小学校に通う兄妹の冒険を描いた『続・12月の夏休み──ケンタとミノリのつづきの冒険日記』(偕成社)。
本連載からは、「睡眠学」の回に書き下ろしと修正を加えてまとめたノンフィクション『8時間睡眠のウソ。 ――日本人の眠り、8つの新常識』(日経BP)、「昆虫学」「ロボット」「宇宙開発」などの研究室訪問を加筆修正した『「研究室」に行ってみた。』 (ちくまプリマー新書・2014年12月上旬刊行予定)がスピンアウトしている。

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