閑話休題。

 小野さんがボルネオ島のブキットテンコラックで調査を行った当時は、外洋性の魚の骨を同定しなかった。先行研究でもカウントされていなかった。それには理由がある。

「──たとえば外洋性のマグロやカツオ、それからサメの同定をしようとすると、椎骨をみないといけなんですが、背骨って1個体でも場所によってかなり特徴が変わったり、同定するのにかなりの労力と時間がかかるんです。オセアニア考古学は研究者が少ないし、圧倒的に魚の骨がたくさん出る。しかも南の魚って種類がとても多い。とてもじゃないけど、椎骨まで見てらんないってことから、むしろ、あごの骨を見る必要があるっていうことになっていました。それで椎骨は本当に最後のブラックボックスみたいになっていて、誰もタッチしなかったっていう」

「──出てくる魚種としてはブダイが圧倒的に多いんです。ブダイは骨自体も非常にがっちりして残りやすいし、形態も非常に特徴的です。ほとんどの遺跡で数がナンバーワンになるんです。その次に多いのがベラとか。まあナポレオンフィッシュなんかもそうですけど、やっぱり非常にあごが発達していて残りやすい。いずれもサンゴ礁の周辺に住んでるような魚ですね。最少個体数といって、最低何匹いたかっていうのをカウントするんですけど、顎はひとつあれば1個体とわかるけれど、椎骨ではわかりません。それでサメなんかの椎骨がたくさん出ても、最小個体数としては全部1。1匹っていうことになってしまうこともあったんです」

 実際にはマグロもサメも出るところでは出る。おまけに1個体のサイズが大きいから食料としての価値は高い。だとすると、やはりきちんと見なければならないのでは? というのが小野さんの論点だ。それが東ティモールの遺跡でのサイエンス誌論文にもつながった。

 さらに、マグロやサメの重要性を示す研究を、小野さんは示してくれた。

ブダイのさまざまな骨(左)と特徴的な形の咽頭歯(右)。(写真クリックで拡大)

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