第3回 人類はマグロを4万年以上前から釣って食べていた

 貝と石器しか出てこないタラウド諸島リアンサル遺跡は、小野さんによって集中的に発掘・研究された。食べ物として貝ばかり出るという不思議なところだ。日本の貝塚だって、決して貝ばかりではなく、魚骨や獣骨も出てくる。いったい、なぜ貝ばかりなのか。

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「動物が出ない理由として、1つ言えるのは、そもそも動物がほとんど住んでない島なんですよ。陸上の動物で、人間が持ち込んだもの以外でもともといたっていうのは、コウモリのたぐいと、クスクスと呼ばれる有袋類のたぐいだけなのですが、これらが本当にその当時いたかどうかわかってないんですけど、少なくとも今はそういったものが現生でいるっていうことなんですよね。食べられるタンパク源になるものが極めて少なくて海洋資源に依存しなきゃいけなかったんでしょう。ただ魚が全然出ないっていうのは非常に不思議なところです。普通出るところは出るんですけど、ここは本当に貝しか出なかった」

 実にミステリアスな遺跡なのだ。

 では、遺跡はどんな状態だったのだろう。

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「掘っている感覚としては、日本の貝塚とはまったく違います。貝が出てくる層というのが上から下までわずか60センチなんですよ。その60センチの中で、3万5000年から8000年前まで、結構きれいに分かれます。それだけ堆積が浅いってことは、そんなに多くの人が使ってなかったっていうことが1つと、断続的に形成されているのはどういうことだろうか、と。私なんかは、恐らく、資源が非常に少ないので、どこかにまた移動したか、あるいは死に絶えたかっていうふうに考えていて、だから当時の狩猟採集民の人たちが、資源が非常に限られている離島に移住しても、継続的に居住するっていうのはかなり難しかったんじゃないかと。この事例ではそのような議論もしたことがあります」

 別の島の話題に移ろう。東ティモールのジェリマライ遺跡。4万2000年ぐらい前のこの遺跡では、また別の生活ぶりを垣間見ることができる。

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本誌2014年12月号では人類拡散の足跡をたどる特集「人類の旅路を歩く 「約束の地」レバントへ」を掲載しています。Webでの紹介記事はこちら。フォトギャラリーはこちらです。ぜひあわせてご覧ください。