第2回 人は約3万5000年前から100キロの海を渡っていた

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「第1の波にしても、第2の波にしても、ここを通って人が行ってるってことは間違いないので、通過点で一体どういうことが起きたのか。特にオセアニア域は、一言で言うならやっぱり海と島の世界なんですね。オーストラリアは大陸なので印象が違うかもしれませんけど、他のところは特にリモートオセアニアとかを含めて、海との接点が非常に多い。地球儀を見渡しても、一番、海に特化しないといけない地域です。そこに、もともとアフリカから来た大陸出身の我々人類がやってきて、アフリカから見れば一番かけ離れた環境、海洋環境にどうやって適応していったのか。人類史的な視点としては、いかにホモ・サピエンスが、海を渡る技術や島で生き抜く知恵を得たり、魚や貝などの海産物の利用法の発展させたり、海洋適応していったか。そういうのをドラマティックに示してくれる絶好のフィールドなんですよ」

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 人類の拡散のルートの研究、そして、海洋環境への適応の研究が、小野さんが掲げる2本柱、いや海洋世界だけに、「2本の帆」だ。それらを見るのに格好のフィールドなのである。

 背景説明自体、非常に面白いので、長々と書いてしまったが、ここから先、小野さん自身による調査研究に踏み込もう。

「ウォーラシア海域というのは、大陸と大陸にちょうど挟まれた島嶼地域で、ダーウィンと同時期に進化論を唱えたアルフレッド・ウォーレスにちなんでつけられた名前です。国としてはインドネシアの東側とほぼ一致する地域。今は独立した東ティモールとかありますけど、もともとはだいたいインドネシアだったんですよね」

 地図をあらためて見ると、インドネシアのロンボク島とニューギニアの間には、大小たくさんの島がある。小さな人類ホモ・フローレシエンシス(通称ホビット)が発見されたフローレス島や2002年にインドネシアから独立した東ティモールはニュースでもしばしば聞くが、やや北側に外れたタラウド諸島やマルク諸島(歴史的にはモルッカ諸島、あるいは香料諸島の方が通りがよいか)は、このところあまり話題に上らないように思う。

 しかし、それらの小さな島々で人類史上の大切な知見が得られている。

ウォーラシア海域およびニアオセアニア。(画像クリックで拡大)