「新石器時代、今から4000年前から3500年前ぐらいですけど、その頃にオーストロネシア語族といわれる、現在オセアニアのほぼ全域で話されている言語の元になっているような言葉を持った集団が、南中国から台湾を経由して、さらに東南アジアのフィリピンですとかインドネシアを通ってオセアニアのほうに行ったのではないかというふうに言われていますね」

 第2の波であるオーストロネシア語族の移住は、先住民であるオーストラロ・メラネシアンがいる場所と重なりつつ進んだので(オーストなんたらなので、非常にややこしい。ぼくはむしろ後半を見て識別している)、一部、波に飲まれて上書きされてしまうような地域もあったそうだ。ただし、全く同じ場所を上書きするような動きをしていたわけではない。第2幕の移住者は、先住者のいるオーストラリアやニューギニア本島にはあまり入っていかなかった反面、より大きな海洋世界に挑んだ人たちでもある。

「1回目の波では、いわゆるメラネシアのソロモン諸島までしか到達しませんでした。別の言葉ではニア(近い)オセアニアといわれるところまでです。しかし第2幕ではリモート(遠い)オセアニアと言われる地域、いわゆるミクロネシアとフィジーやヴァヌアツ等のメラネシアの離島域からポリネシアまで進出しました。ポリネシアとかミクロネシアといった地域は、3500~4000年前の新石器時代のときの移住で初めて人が到達したんです」

ポリネシアは最後のフロンティアだった。(画像クリックで拡大)

 ニアオセアニアとリモートオセアニア。

 ニアはオーストラリア大陸やニューギニアやメラネシアのことで、旧石器時代の1度目の移住で到達できたところ。リモートは文字通り遠い大洋に散らばった島々で、サモアやトンガやフィジーなどわりと近めのところから、さらに遠くマルケサス諸島やクック諸島やイースター島やハワイ諸島やニュージーランドまで壮大な拡散のドラマがある。最後に残ったイーター島やニュージーランドに移住が完了したのは1000年前から800年前のことで、つまりとっくに日本では歴史時代だ。

 話が大きくなったけれど、人類が海に適応する場となり、数万年前と数千年前、2度のオセアニア移住の回廊となったかもしれないのが、小野さんの中心的な調査地ウォーラシアの多島海なのである。

つづく

小野林太郎(おの りんたろう)

1975年、島根県生まれ。東海大学海洋学部海洋文明学科准教授。博士(地域研究)。2003年、上智大学外国語学研究科地域研究専攻博士課程単位取得後、日本学術振興会特別研究員(国立民族学博物館)、総合地球環境学研究所研究プロジェクト推進支援員,日本学術振興会海外特別研究員(オーストラリア国立大学)などを経て,2010年より東海大学海洋学部海洋文明学科に所属。専門は海洋考古学、東南アジア地域研究、オセアニア考古学。『海域世界の地域研究 (地域研究叢書 24)』(京都大学学術出版会)などの著書がある。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社)(『雲の王』特設サイトはこちら)、NHKでアニメ化された「銀河へキックオフ」の原作『銀河のワールドカップ』『風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)など。最新刊は、ニュージーランドで小学校に通う兄妹の冒険を描いた『続・12月の夏休み──ケンタとミノリのつづきの冒険日記』(偕成社)。
本連載からは、「睡眠学」の回に書き下ろしと修正を加えてまとめたノンフィクション『8時間睡眠のウソ。 ――日本人の眠り、8つの新常識』(日経BP)、「昆虫学」「ロボット」「宇宙開発」などの研究室訪問を加筆修正した『「研究室」に行ってみた。』 (ちくまプリマー新書・2014年12月上旬刊行予定)がスピンアウトしている。

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