第113話 なんと!なんと!朝一の電話に、嬉しびっくり

「スノーモービルは、もっと危険だよ!」

 確かに、スノーモービルはエンジンパワーが凄いけれど、実はその分、危険も伴う。

 重量のある車体で、新雪を開きながら起伏の激しい山道を走るには、それ相当の腕の力とハンドルテクニックが必要になる。

 しかも、転倒すれば、重い車体の下敷きになることもあるし、重症を負うこともある。

 エンジンが故障でもすれば、厳冬原野の真ん中で、にっちもさっちも行かなくなって、その場に取り残されることになってしまう。

 世界的に有名な犬橇レースなど、最も過酷なレースと紹介されることが多いが、本当はブレークアウトするスノーモービラーたちの仕事のほうが、よっぽど過酷と言われているのだ。

 だから、もしもの遭難のリスクを避けたいならば、やはりスノーモービルよりも、なにかと融通が利く犬橇を選ぶべきだ。

 しかしながら、両手を塞がれてしまったような私たちは、酷くため息をついて、うなだれるように頭を抱えた。

 その様子を察した電話口のオリバー爺さんもまた、ため息をついて、

「お前さんたちを、危険な目には遭わせられない……」と、悲しそうに電話を切った。

 けれど、私たちは諦めることができなかった。

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つづく

廣川まさき

廣川まさき(ひろかわ まさき)

ノンフィクションライター。1972年富山県生まれ。岐阜女子大学卒。2003年、アラスカ・ユーコン川約1500キロを単独カヌーで下り、その旅を記録した著書『ウーマンアローン』で2004年第2回開高健ノンフィクション賞を受賞。近著は『私の名はナルヴァルック』(集英社)。Webナショジオでのこれまでの連載は「今日も牧場にすったもんだの風が吹く」公式サイトhttp://web.hirokawamasaki.com/