第113話 なんと!なんと!朝一の電話に、嬉しびっくり

 その理由は、このミンチュミナからデッドフィッシュ湖の近くまで、昔の罠師が開いた細道があるのだけれど、その道は、もう何年も使われておらず、この冬も、誰も雪を開いていないからだと言う。

 それを聞いて、私は盲点を突かれたように、ハッとした。

 そもそも犬橇は、積もったままの深雪の上を走ることができないのだ。

 犬橇レースとして有名なユーコンクエストやアイディタロッドでも、実は、犬たちが走る道を作るために、あらかじめスノーモービルで走って、雪を踏み固めておくブレークアウトという作業を行う人がいるお陰で、レースの犬たちが走れるのである。

 しかも、道筋のない道を行くことは、先頭を走るリーダー犬の精神的な大きな負担にもなる。

 例えば、マッシャーが「走れ!」と指示を出しても、目の前に大きな空間だけが広がっている場合、どの方向にまっすぐ走るのかが判断できず、迷い足を踏みながら混乱して、思考疲労が積もりやすい。

 未踏の森に、誰よりも先に足跡をつけなければならないのだから、不安と恐れで、心労も積もりやすいのである。

 よほど、心も体もタフなリーダー犬でなければ、道なき道を、深雪を掻き分けて、後続の犬たちを率いて橇は引けないだろう。

 それに、もちろんトーニャは、そこまで犬たちを酷使するつもりもない。

 考えに苦しみながら、それでもオリバー爺さんの思いを叶えたくて、トーニャは絞り出すような声で言った。

「どうにか、スノーモービルで行けないかしら……」

 けれど次の瞬間、無線のスティーブが強い口調で言った。