第12回 不眠症の本質は睡眠時間の誤認である
さてKさんが感じている“目覚めていた時間”を計算してみる。
寝つきにかかった時間:約 1時間30分
1回目の目覚め時間:約15分
2回目の目覚め時間:約30分
3回目の目覚め時間:約1時間
朝の目覚めから検査終了まで:約1時間
感じている目覚め時間の合計は4時間15分! ベッドで横になっていたのは8時間なので、差し引きで正味の睡眠時間は3時間45分となる。消灯時間の半分以下しか眠れていないのだから、夜が辛いのも納得である。検査で緊張したためか普段よりも眠りが浅かったというが家でも似たり寄ったりで「最後に5時間以上寝たのがいつだったか思い出せない」と嘆くことしきり。
では、Kさんの睡眠脳波検査の結果をみてみよう。
寝つきにかかった時間:47分
1回目の目覚め時間:15分
2回目の目覚め時間:18分
3回目の目覚め時間:32分
朝の目覚めから検査終了まで:41分
実際にKさんが目を覚ましていた時間は2時間33分、脳波で確認された睡眠時間は5時間27分、自分で感じていた睡眠時間よりも2時間近く長いという判定結果であった。
結果を説明されたKさん。しばらくしてボソリと「私はウソをついたわけではないですよ……」勿論ですKさん、誰も疑ったりしていません。Kさんの不安、疑念、怒りを解くために普段の診療では以下のような説明をする。
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