プリントの概念が今、大きく変わろうとしている。3D(三次元)プリンター周辺の技術革新が急加速し、ものづくりの門戸が広く開かれつつある。

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未来の形を変える3Dプリント

プリントの概念が今、大きく変わろうとしている。3D(三次元)プリンター周辺の技術革新が急加速し、ものづくりの門戸が広く開かれつつある。

文=ロフ・スミス/写真=ロバート・クラーク

 このごろ話題の3Dプリントは、実は30年ほど前からある技術だ。最近の急速な進歩で注目が集まり、今後の期待も大いにふくらんでいる。

 3Dプリンターの原理は普通の二次元プリンターとおおよそ同じだが、インクの代わりに使われるのは、プラスチックやロウ、樹脂、木材、コンクリート、金、チタン、炭素繊維、チョコレート、生体組織など。これらを液体、ペースト、粉末などの形状にして1層ずつ重ねていく。自然に固まる素材もあれば、熱や光によって固まる素材もある。

 素材を少量ずつ必要な場所に配置していく3Dプリンターは、複雑な形のものも作れるし、強度を落とさず、重量を大幅に減らせるケースも多い。また、入り組んだ構造のものを一体成形することも可能だ。たとえば、米国のゼネラル・エレクトリック(GE)社が3Dプリンターで製造するチタン製燃料ノズルの一部は、従来の方法だと、少なくとも20点の部品を組み立てる必要がある。

3Dプリンターで作製した古人類ホモ・ハビリスの頭骨レプリカ。完成まで15時間を要した。

3Dプリンターで家づくり、生体組織や拳銃も?

 だが、3Dプリントに関心を寄せているのは、こうした大企業ばかりではない。

「3Dプリントが将来大きな役割を担うことは、誰もが認めています」と、オランダの建築会社DUSの共同経営者、ヘドウィグ・ハインズマンは語る。同社は現在、アムステルダムを流れる運河の岸辺に、1軒の家を“プリント”している。高さ6メートルのプリンター「カマー・メーカー」を使い、素材や設計、コンセプトを検証しながら、壁や軒、部屋などを造っていく3年がかりのプロジェクトだ。

 米国ハーバード大学の研究チームは3Dプリンターを使い、血管が縦横に走る生体組織の作製に成功した。いずれは患者自身の細胞でプリントした臓器の移植が実現するかもしれない。

 2013年5月、米国の政治活動家コーディー・ウィルソンは、3Dプリンターで拳銃を作製し、世界で初めて試射に成功したと発表してメディアの注目を集めた。「リベレーター(解放者)」と名づけられたその38口径の単発銃はプラスチック製で、素材のコストは60ドル(約6000円)ほどしかかかっていない。

 だが、信頼性の高い銃は簡単にはできないし、安く作れるわけでもない。米国カリフォルニア州のソリッド・コンセプツ社が、3Dプリンターで45口径の自動拳銃「M1911」を100丁限定で製造したときは、プリンターなどの設備に50万ドル(約5000万円)以上の費用がかかった。

 3Dプリントの拳銃が安くできないことに落胆する人は、そう多くはないだろう。だが「何でも作れる万能マシン」と期待した3Dプリンターから、できそこないの完成品が出てきたら、がっかりする人は多そうだ。英国ロンドンにある3Dプリント会社のデザイン部長、ジョナサン・ローリーは言う。
「3Dプリンターが生み出す製品の素晴らしい話を見聞きしていると、つい自宅でも同じことができると思い込んでしまいます。でも現実は違います」

※この続きは、ナショナル ジオグラフィック2014年12月号でどうぞ。

編集者から

 今回の特集で3Dプリンターを調べたところ、自分が思っていた以上に、すでに普及していたのにはビックリ。タイトルに「未来の」とつけちゃいましたが、「明日の」としておいたほうがよかったかしらと、やや反省。(編集H.O)

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