この日、神奈川県横浜市を訪れた私と編集Tさんは、2つ、3つと続く急な坂道を上っていた。「まだあるの……」と言葉は減り、息が荒くなるばかりの運動不足な女子2名。しかし、「がんばろう、美味しい料理が待っている」と互いを励ましながら歩を進める。坂の上に建つ建物で、ある国のソウルフードを食べる予定なのだ。

 数週間前に、「おもしろいサイトを見つけました」とTさんが連絡をしてきた。「世界の家庭料理を旅しよう」というコンセプトのもと、手づくりの料理を通じて世界各国の人と人をつなぐ「KitchHike(キッチハイク)」というマッチングコミュニティサイトである。さっそくサイトを開くとずらりと並ぶ各国の料理と登録者(料理をする人)のプロフィール。この中から食べたい料理を選ぶと登録者と連絡が取れ、手づくり料理を一緒に食べるという仕組みで、かかるのは料理の費用だけのようだ。

 料理だけでなく外国の人たちとの会話も楽しめるのは画期的だなと、アメリカやイタリア、トルコなど登録されたさまざまな国の料理を眺めていると、気になる料理があった。以前、この国の観光協会の人に「朝ごはんの定番。毎日食べる欠かせない国民的な料理」だと聞いたからだ。そこでコンタクトを取り、Tさんと伺うことにしたのである。

 坂の上に建っていたのは築50年くらいの団地のような建物。ある会社の社宅をリノベーションした大型のシェアハウスで、外観は年季が入っているが、食堂だろうかガラス張りの共用ルームにはモダンなインテリアが置かれていてオシャレな雰囲気が漂っている。

「こんにちは」と声をかけてくれたのが、このシェアハウスに住むアマンダ・フイ・フイ・ヤップさん。笑顔の愛らしいマレーシア人だ。料理をつくるのが大好きで、キッチハイクは友人に紹介してもらったという。「ほとんど準備はできていますよ」とアマンダさんは共同のキッチンに案内してくれた。キッチンには惣菜や調味料が並び、火にかけられた鍋はグツグツと音を立てている。

※この記事は2014年11月に掲載したものですが、「KitchHike」は2016年4月にサービス内容が一部変更となりました。詳しくは「KitchHike」のホームページをご覧ください。

シェアハウスの3つ並ぶキッチンの1つでナシレマッをつくるアマンダさん。キッチハイクのほかに料理教室を開くこともあるそうだ

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