第86回 意外なところで見つけたゾウムシ
A cryptorhynchine weevil
「鼻」や脚を胸の部分へくっつけるようにかたまり、死んだふり(擬死)をしているところ。逆立つ鱗毛が特徴的な種だ。
体長:4 mm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ (写真クリックで拡大)
写真のゾウムシは、死んでいるように見えるけれど、生きている。このように擬死するゾウムシは少なくないが、次に紹介するゾウムシは、ちょっと違った方法で死んだふりをしている。
白いキノコが生えたような装い。アナアキゾウムシの専門家に見てもらっても、キノコ(菌類)に侵されて死んでいるはずと言う。たしかに、冬虫夏草と呼ばれる状態のようにも見える。
ところがこの写真を撮影したとき、ゾウムシは元気よく動いていた。ちゃんと生きていたのである。
ココナッツを削ったような白い物質は、体表のくぼみから分泌されて伸びたワックスではないかと、ぼくは考えている。専門家は、「動いていたとしても、菌類に侵されて死ぬ直前だったはず」と主張、議論は平行線をたどっている。菌類の場合、ゾウムシが動かなくなってから生えるはずなんだが・・・まあ、なんとかもう一度このゾウムシを見つけて飼育し、詳しく観察してみたいものだ。
ワックスをはがしてみた
下の写真のようにカラフルなワックスで覆われたゾウムシもいる。カツオゾウムシの仲間だ。
赤茶色と黄色の粉のようなこのワックスは、触ると比較的簡単に取れてしまう。そこで、ここモンテベルデでも同じ属のカツオゾウムシを見つけたので、赤と黄色の粉ワックスをはがしてみることにした。
ワックスの下から露わになったのは、黒い「地肌」。はがしたワックスのニオイを嗅いでみると、このゾウムシが食べるキク科の葉の香りがする。
そしてまた、このゾウムシに新鮮な葉をしっかりと食べてもらうことにした。2~3日経って撮ったのが下の写真。ワックスが再生して、ほぼ元の姿に戻っていた。体表からワックスが噴き出してくる感じなのだ。不思議!
多種多様過ぎて、まだまだ新種だらけ。生態にいたってはなおさらわかっていないゾウムシの世界のほんの一部の一部を4回にわたりお届けできました。
モンテベルデの山の上から太平洋側のニコジャ湾を望むと、西日を浴びた海面の光に浮かび上がった木々のシルエットが、ゾウムシに見えた。
海の向こうにも果てしないゾウムシの世界が広がっているのだろうな~。
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おまけ:小さなゾウムシ