第86回 意外なところで見つけたゾウムシ

クモゾウムシの仲間(ゾウムシ上科:ゾウムシ科:クモゾウムシ亜科)
Conoderine weevils, Cratosomus sp.
比較的大きなこの種は、どこか「埴輪(はにわ)」のようなかたちをしている。スミソニアン(アメリカ国立自然史博物館)にはこの種の標本がなかったので、新種の可能性がある。
体長:約20 mm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ(写真クリックで拡大)

 11月と言えば、日本は冬へ向かうタイミングだが、ここモンテベルデは乾季に移行する時期で、昼間の気温が上がり、活動する昆虫たちの数が少しずつ増え始めた。

 今回はゾウムシシリーズの4回目。ちょっと変わったところで見つけたゾウムシたちを紹介しよう。

ブロメリアは生き物のオアシス

コナラの木に着生するブロメリア。赤い花のように見えるのが葉。(写真クリックで拡大)

 みなさんはブロメリアという植物をご存知だろうか。
 パイナップルと同じアナナス科で、写真のように木々に着生しているものが多い。エアープラントもこの仲間だ。密集した葉の中心部は雨水を長い間ためることで有名で、そこはいろいろな生き物のすみかにもなっている。

 あれはたしか2003年。オランダ人の研究者といっしょにヒラタアブの調査をするため、「死の丘」というコスタリカの3000メートル級の高山にあるコナラのジャングルへ行ったときのことだ。

 ちょうど嵐の後で、大小たくさんの木々の枝がドサドサと地面に落ちていた。 落ちた枝には、たくさんの着生植物がついていて、なかでもブロメリアが目立っていた。水生のヒラタアブの幼虫なども、その水たまりに生息している。

 このブロメリアの葉を観察していると、葉の先端から水中へと消える不思議なジグザグの線を見つけた。昆虫の幼虫が潜った跡のようにも見える。ほかにも同様の線をいくつか見つけたので、いったい何が潜っているのだろうと、葉を抜き取って調べてみることにした。

 ジグザグ線を追跡し、葉の付け根の、水がたまっていた辺りまでいくと・・・いた!

 ゾウムシのサナギだ。

 さっそく飼育して、成虫を得ることに成功。写真を撮って、ドイツの友人のヒメゾウムシの専門家にメールで送ると、「葉に潜るヒメゾウムシの生態はこれが世界初だ!」という返事が来た。

 しかも、ブロメリアの水たまりの水面下でサナギになっているではないか!これはおもしろいと調査や飼育を続けていくうちに、ブロメリアの葉に潜るゾウムシが、ほかにも複数いることがわかってきた。論文にするため、今も研究を続けている。

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左は、成熟した幼虫。潜った葉を開けてみたところ。下にあるオレンジ色の部分が頭で、白い体には突起がいくつかある。右の写真の中央の茶色い部分は、卵が産みつけられた場所。孵った幼虫は左下へと潜る(黒っぽい筋)。まだ属名は付いていない仲間で、中南米に生息することがわかっている。(写真クリックで拡大)