第112話 これはもしかして!春を呼ぶ、雪の舞?

 なぜかと言うと、私は一晩に雪が1メートルほど降り積もることもある雪国富山の山間部に生まれ育ったからだ。

 北陸地方の冬は、いつもどんよりと重く湿った雲に覆われていて、体に冷たい湿気がまとわりつくような寒さをもたらす。

 そんな冬に慣れている私には、郷愁を誘うような空気の質感でもあったのだ。

 ある意味、これは、春に向けて気温が上昇しはじめていることを示している。

 今まで凍てついていた世界が、湿気を取り戻し、しっとりとしてきたのだから。

 どんなに凍てついた冬も、いつかは終わる。

 地球は確実に太陽の周りを回り、季節を巡らせているのだと、壮大な宇宙の世界にまで想像を膨らませてしまうのだった。

 空の向こうに、思いを馳せている私に、
「暗くなる前に、急いで帰ろう」と、スティーブが叫んだ。

 確かに春の足音が近づいてはいるものの、この寒さは、まだまだ極寒のうち。

 1歩でも間違えれば、すぐにも遭難という状況になりかねない、厳しい自然環境下でもある。

 私たちはスノーモービルのエンジンをかけて、急いでトーニャのロッジに戻ることにした。

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