File7 日本の食品ロス 井出留美
第3回 年間500万トンを超える食品ロスを減らすには
また、生物資源の利用においては「バイオマス5F」といわれるものがある。Food(食物)、Fiber(繊維)、Feed(飼料)、Fertilizer(肥料)、そしてFuel(燃料)で、これも多段階に利用する際の優先順位を表している。
「食物に余剰があれば、そのまま食物として使うことを第一に考える。それが最も社会的に無理のないやり方です。食品生産に労力とエネルギーをかけているのに、リサイクルで再び労力とエネルギーをかけるのはもったいない。そういう考え方が、もっと日本で普及してほしいと思います」
2HJの現況では、缶詰やレトルト食品、飲料、調味料類などの食品を寄贈する企業はメーカーが圧倒的に多い。それは卸売業者や小売業者から返品されてくる製品の廃棄コストを削減したいという意向があるからだ。しかし、最近は大手スーパーなど小売業からの寄贈も少しずつ増えている。
一方で、野菜などの生鮮食品の取扱量は1割程度と低い。生鮮品には保管設備が必要だし、輸送にも細かい気づかいを要するので、取り扱う食品は加工品に偏りがちになる。
「アメリカでは、野菜の過剰生産分を国が買い上げて生活困窮者に供給することを定めた法律が1970年代にできています。ですから、取扱量の半分が生鮮野菜というフードバンクも、アメリカにはあります」
生鮮野菜の取り扱いをどう増やしていくかが、2HJの課題のひとつとしてあるという。
取り扱う食品が加工品に偏りがちなのは、アメリカでも多くのフードバンクが抱える課題でもある。生鮮品が不足するため、同国では食品の支援を受けている家庭で、肥満が増えていることが問題視されている。
「食品の量を確保することがまず先決なのですが、食品の質も高めていきたい。栄養バランスを整えたかたちで、食品を供給できるようにしていきたいと思っています」と井出さんはいう。
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