納品期限切れの延長は、食品メーカーの余剰生産の削減や、流通過程における納品期限切れ食品の削減には効果がある。しかし、販売期限が3分の1期間のままでは、肝心の小売段階での食品ロス削減には実効性が薄いのではないかと思われる。

「販売期限3分の1は、賞味期限切れの食品を店頭に並べっぱなしにしないよう、小売店が管理するためでもありますが、賞味期限がなるべく長い食品をほしがる消費者の要求の表れでもあります」と井出さんはいう。

「たとえば、スーパーの売り場の棚が空いていれば、その店は品ぞろえが悪いと消費者は敬遠する。欠品を許さず、新しいものをほしがる消費文化が、製造段階にまで影響して、日本の3分の1ルールが定着しているといえるのかもしれません」

 スーパーより売り場面積が小さいコンビニでは、陳列スペースの獲得競争が激しい。井出さんによれば「1週間の販売個数が伸びなければ、すぐにスペースを失ってしまう」という。新製品やパッケージを新しくした改訂商品は、コンビニに受け入れられやすいという事情もあり、そうした影で売り場を失った食品が処分されていく。

「これは、うちに来た製パン業者から聞いた話ですが……」

 その業者は、ある有名デパートの食品売り場に焼きたてパンの店を出している。デパート側から申し渡されているのは、常に売り場を商品で埋めておくことと、その日の分を売り切るための値引き販売をしないことだという。どちらも、そのデパートの高級感を損なうからだ。

「ですから、その店では売れ行きがどうであろうと、閉店まで値下げせずに複数の種類のパンを店頭に並べ続けているのだそうです」

 目新しい商品や売れ筋商品を求めるのは、店側ばかりではない。消費者の同様な欲求がそれをさせているという面がある。食品業界の具体的なロス削減対策は、端緒についたばかりだが、同時に消費者の購買意識を変えていくことも大切なようである。

個人から2HJに寄付された食品。3分の1ルールが定着しているのは、欠品を許さず、新しいものをほしがる消費文化も影響しているかもしれない。賞味期限が切れる前の食品であれば、フードバンクをはじめ、社会貢献として寄付しても。(写真クリックで拡大)

つづく

高橋盛男

(撮影:藤谷清美)

聞き手・文=高橋盛男(たかはし もりお)

1957年、新潟県生まれ。フリーランスライター。自動車専門誌の編集を手がけたのちフリーライターに。JR東日本新幹線車内誌「トランヴェール」、プレジデント社「プレジデント」「プレジデントファミリー」などに執筆。

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