第1回 南極まで6時間

ALCIの車に貼られているステッカーには“南極まで6時間”の謳い文句が。

 ケープタウン~ノボラザレフスカヤ基地間、それと、ノボラザレフスカヤ基地からその周辺基地へアクセスするための航空網は、DROMLAN(Dronning Maud Land Air Network)と呼ばれている。ノボラザレフスカヤ基地や、同基地から約1100km離れた日本の昭和基地、他にもいくつかの基地がDronning Maud Landというエリアにある。

 DROMLANは、そのエリアに基地を保有する国など計11カ国が共同出資するかたちで、ケープタウンにあるALCIが運航している。多分、こんな特殊な航空網があるなんて、普通知りもしないだろう。かくいう私もこうやって実際に利用するまで、このシステムをいまいちちゃんと理解できていなかった。もし南極関係者でもないのにこれを知っていたら、それは相当マニアックな人に違いない。

 ALCIに到着すると、建物の前に停まっていた車にこう書かれていた。

“Cape Town to Antarctica ― 6 Hours”

 そう、なんと南極に6時間で着いてしまうのだ。
 これまでの3回、昭和基地周辺の調査地へは片道1カ月かけてたどり着いた。720時間(1カ月)÷6時間=120・・・ふと頭の中をこんな計算式がよぎったが、実際のところこんな割り算はどうでもよくて、その程度の時間しかかからないことは分かってはいたことだけれど、目の前のキャッチコピーになんだか面食らってしまったのだった。だって、私がここまでに来るのに飛行機に乗っていた時間は、東京~ドバイ12時間、ドバイ~ケープタウン10時間。なんだろう、この違和感とこみ上げるおかしさは。

ソワソワと、ワクワクと

 荷物を預け、ブリーフィングが始まった。冒頭で「とにかく今日は運航しない」ことが伝えられた。出発する心づもりをしていた私は少し気が抜けたような、けれどソワソワするような、なんとも言えない気分になった。気象情報は毎日アップデートされ、もしかしたらまた明日には状況が変わっているかもしれない。いっそのこと、「日曜に決定!」と言ってほしいものだが、そうもいかない。日々、情報をキャッチしながら、いつでも出発できるように常に待機していないといけないのだ。