へとへとに疲れていたけれど、憧れのブッシュ・キャンプに行けるのだと分かったとたん、急に元気が湧いてくるのを感じました。

 ニオイヒバの森へと続くのとはまた別のところからトレイルが延びていました。

 嵐の影響か、ところどころで木が倒れてはいましたが、被害はそれほどでもありません。

 美しい小道を15分ほど歩いていくと、ジャッド湖という名の湖に辿り着きました。

 ジャッド湖は、東西に約1キロ、幅150メートルと細長い湖で、ウィル・スティーガーのホームステッドがあるピケッツ湖と同じぐらいの規模でした。

 そして、その周囲はすべて、ジムの私有地とのことでした。

 ぼくたちが辿り着いたのはその西の端で、湖を見渡すのにちょうどいい高さの岩棚の上に、茶色く目立たないように建てられた小屋がありました。

 幅は3メートル、奥行きは4メートルもないでしょうか。

 ログで組んだ壁の高さも1メートルほどしかなく、細い丸木を交差に組んだ枠にキャンバスを渡しただけの屋根でした。

 なるほど、「キャビン=小屋」というよりは、「キャンプ」と呼びたくなるような、簡素なたたずまいです。

 入り口は湖に面していて、扉の取っ手を引いてなかに入ると、そこにはテーブルがひとつとベッド、そして、一番奥に薪ストーブが置いてありました。

 クロクマに荒らされると困るので、小屋のなかで調理はしないらしく、キッチンはありません。

 そのかわり、小屋のすぐわきに、焚き火をする場所がありました。

 ジムが、ストーブの煙突のつなぎ目や、屋根のキャンバスの張り具合を確認している間、ジュディは、小屋のわきに積んであったマキを使って焚き火をおこし、鉄製のグリルでなにかを焼きはじめました。

「バイソン・バーガーよ。食べたことある?」

 かつて乱獲のために絶滅の危機にまで瀕した北米のバイソン。

 原野を数万頭で駆け巡る姿を見ることはできなくなったけれど、数自体は増え続け、いまではバイソン農場もあって、脂肪分のすくない肉はヘルシーな食材として市場にでまわっているのだそうです。

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