第111話 哀れで愛おしい、糞観察結果

 羊はというと、反芻して、とことん栄養を濾しとってから排出するので、昔の丸薬を大きくしたようなコロコロしたものを、ぽろぽろと落とす。

 ムースは、それを少し大きくしたようなものだ。

 豚も、餌にもよるが、ほとんど残飯のようなものを食べているので、これが一番、人間の糞に近いと思う。

 ――と、

 一応、人生で遭遇した動物の糞は、すべて観察したことのある私でも、この糞は少し興味深かった。

 糞の内容物のほとんどが、ムースの毛なのである。

 肉を食べているうちに毛が入ってしまったのだろうが、それにしても、糞と毛の割合が酷過ぎる。

 ほとんど、毛しか食べていないのではないだろうかと思うほどに、毛ばかりの糞なのだ。

 肉が消化されて濾されたようなものが、ほとんど無い。

 私は、もっと詳しく見てみようと、未だかつて、ここまで糞に顔を近づけたことがない、というくらいに顔を寄せてみた。

 カチカチに凍っているせいか、ニオイがまったくない。

 糞に霜が下りたのか、それとも、糞をしたときに上がるほかほか湯気が凍って付着したのか、薄い氷の結晶のようなものでコーティングされていて、安全に触ることができそうだった。

 氷の粒が手の体温で解けることを計算に入れれば、短時間なら素手でもいけそうだ。

 私は野球のグローブのようなミトンの手袋を外して、指先で突いてみた。

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