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 宿主の行動を操作する恐ろしい奴だが(このとき、我々が感じる恐ろしさは「寄生されたら嫌だ!」に尽きる)、今回のフィールドで何匹も見ているうちに印象が変わってきた。

「ハリガネムシって、カマドウマほど嫌がらない人の方が多いんですよ」と佐藤さん。

「実物を見せると、「ああ、これか」と触ったりできる人も比較的多いんですけれども、カマドウマは見るのも嫌とか言われてしまいます」

 本当にカマドウマはどこまで行っても嫌われており、救いがない。ぼくは、結構格好良いと思っている、ということを、あらためて強調しておこう。それが彼らになんの慰めにもならないとは承知しつつ。

 そして、ハリガネムシが、実際に見ると、それほど嫌ではないというのもまた事実だと思う。『寄生獣』みたいにパカッと開くというのは滅多に起きることではないし、クチクラの体は、見た目も触感もどこか無機的だ。動き方はたしかに気持ちわるいが、手に取ってみると、それほど素早くないので、ハリガネに合成樹脂の被覆をしたもののようにも思えてくる。

 ぼくたちがフィールドにいる間に、2匹の完全体、つまり、どこも切れていなくて30センチ以上あるようなものを見つけたのだが、その1匹はオス、もう1匹はメスだった。

「こいつたち、一緒にすると、すぐに絡まりあっちゃうんです。宿主をあやつって、水の中に入っても、そこですぐに相手が見つかるわけでもないでしょうし、見つけたら離れないみたいな」

 実は、今回、生き物として、個体として見た場合、一番、心にしみたのは、美しい渓流魚でも、気の毒なカマドウマでもなく、このハリガネムシたちだったことを告白しておく。

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