第6回 ハリガネムシがつむぐ「森と川のフルコース」詳細レビュー

 美しい渓流魚と対極にあるのがカマドウマ。

 人気がない、というか、ゴキブリなみに嫌われている昆虫として登場し、今回の「エネルギー流」の中でも、行動を操作された上で、単にムチムチした特上の食べ物として扱われるなど、かなり不憫だ。こういった寄生する・されるの関係で、カマドウマ側になにかメリットはあるのだろうか、と素朴な疑問が浮かんできた。

「ああ、それ本当にいい質問やと思います。この系って、カマドウマにとって救いがなさ過ぎるんですよね」と佐藤さん。

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 やっぱり、「救いがなさ過ぎる」ものらしい。カマドウマにはまことにご愁傷さまだ。それでも、ハリガネムシの寄生のせいでカマドウマが絶滅してしまわないようには出来ている。

「ハリガネムシに感染されるカマドウマって、川から50メートルも離れるとガクンと少なくなるんですよ。水生昆虫の分散に依存しているので。だから、その範囲の外に母体があるような個体群やったら、個体群としては大丈夫。あるいは、カマドウマ2種がすごく競争しているような系だったとすると、これは生態学の理論でよくあるんですけれども、片方が多くなってくると確率的に感染が高くなるので、川に飛び込んで殺されるのが増えると。そうすると今度は、もう片方の種が増えてくるとか──」

 やっぱり個体レベルでは救いがなさすぎる話である。いや、ほんの少しなら救いめいたことはあるかもしれないと佐藤さんはいう。

「どうせ寄生されているんだったら、最悪、早めに飛び込んで、早めにお尻から出ていってもらったら、もう一度人生をやり直せるかもしれないみたいな、そういう考えを言っている研究者はいます。バッドな状況での協力があるかもしれない、と。そうすると、いくらこのお腹の中がハリガネムシで覆い尽くされたとしても、3個ぐらいは卵持てるとか、矮小化した精包は持てるとか。飛び込んだとしても、ハリガネムシを出してからもう1回陸域に上がることさえできれば、少しは次の世代に自分の子供を残せるかもしれないという」

 うーん、これを救いというのには、ほど遠い気がする。そして、ぼくにしても、当面、何かでカマドウマを見るたびに、「お、エネルギーの流れが」などと最初に思うことだろう。

 そして、今回のストーリーの主役であろうハリガネムシに再登場ねがおう。