第5回 なんと生き物の半分近くは寄生虫!?

 たしかに、森と川をつなぐエネルギーの流れは、陸から川へ(カマドウマの飛び込み)というのもあれば、逆に川から陸へのパターンもある。そもそも、カマドウマは、羽化して川から飛び立った水生昆虫を食べてハリガネムシに感染する。こういった、複雑な系の背景にある、基本的な繋がり方を解明するのは、それこそ生態学の本分であろう。

「野外で大きな実験するとメンテナンスも大変だから、せいぜい数カ月とかで今まで終わってるんですけれども、もっと長い時間スケールで、生物群集とか生態系が安定しているのかどうかを知りたいんです。例えば、擬似的な森と川を設定して、全部ビニールハウスで囲って、そこにハリガネムシがいたりいなかったりするような状況をつくり出すと。それで、ハリガネムシがいることで森と川のつながりが時間的に安定するかどうかみたいなことを知りたいんですよ。それをできるところを探しています」

 一方で、分子生物学的な手法の発展から、生態学が今までの枠に留まらなくなっていることも指摘する。

「今までの生態学は、個体や個体群、いろんな種の個体群が集まって生物群集といったあたりの、どっちかというとマクロな相互作用を解明しようとしてきたんですが、今の生物学って遺伝子レベルまでどんどんミクロに見ていくじゃないですか。だから、僕らが今まで見ていた個体とか個体群とか生物群集レベルのマクロな生き物のつながりが、遺伝子レベルでどんなふうに規定されてるのかっていうような、生物学の階層をつないで全体を理解するような方向にも行きたいと思っていまして。実は、まさにハリガネムシがどういう遺伝子を使ってタンパク発現を規定して、宿主の行動を操作して、どういう日時や場所にカマドウマを飛び込ませるか。その先で渓流魚がどういうふうに資源を利用するかとか、そういうつながりが分かるようなデータを積み重ねていきたいというのが、もう1つの方向性ですね」

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つづく

佐藤拓哉(さとう たくや)

1979年、大阪府生まれ。神戸大学理学部生物学科および大学院理学研究科生物学専攻生物多様性講座准教授。博士(学術)。在来サケ科魚類の保全生態学および寄生者が紡ぐ森林-河川生態系の相互作用が主な研究テーマ。2002年、近畿大学農学部水産学科卒業。2007年、三重大学大学院生物資源学研究科博士後期課程修了。以後、三重大学大学院生物資源学研究科非常勤研究職員、奈良女子大学共生科学研究センター、京都大学フィールド科学教育センター日本学術振興会特別研究員(SPD)、京都大学白眉センター特定助教、ブリティッシュコロンビア大学森林学客員教授を経て、2013年6月より現職。日本生態学会「宮地賞」をはじめ、「四手井綱英記念賞」、「笹川科学研究奨励賞」、「信州フィールド科学賞」などを受賞している。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社)(『雲の王』特設サイトはこちら)、NHKでアニメ化された「銀河へキックオフ」の原作『銀河のワールドカップ』『風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)など。最新刊は、ニュージーランドで小学校に通う兄妹の冒険を描いた『続・12月の夏休み──ケンタとミノリのつづきの冒険日記』(偕成社)。
本連載からは、「睡眠学」の回に書き下ろしと修正を加えてまとめたノンフィクション『8時間睡眠のウソ。 ――日本人の眠り、8つの新常識』(日経BP)、「昆虫学」「ロボット」「宇宙開発」などの研究室訪問を加筆修正した『「研究室」に行ってみた。』 (ちくまプリマー新書・2014年12月上旬刊行予定)がスピンアウトしている。