たしかに、漢字で竈馬と書くと趣きがあるが、別名便所コオロギともいう。てらっとしてむっちりした体。無意味になまめかしい長い後脚。こいつがさささっと家の中に入ってきたりすると、ゴキブリに近いような不快感を抱く人がいても不思議ではない。というわけで、この時点で、うぎゃーと思った人にはごめんなさい。

 しかし、今回のフルコースの前菜はまさに、カマドウマである。遠慮せずに質問しなければならない。まず、生物学的にいって、どういう素性の生き物なのか。そこから理解していかないと、今回のお題である寄生虫による行動操作や、それが森と川の生態系の中で持つ意味までたどり着けないのである。

「キリギリスの仲間に近い、カマドウマ科というのがちゃんとありまして、日本でも70種以上はいるんです。この研究林にいるのは、マダラカマドウマ、モリズミウマ、コノシタウマといったあたりだと思っています。森の中でじめじめしたところで暮らしていて、なにかの死肉ですとか、有機物なら何でも食べるような生き方ですね。デトリタス食者、日本語としては、腐肉食者などと言います。昔、家にかまどがあった頃は、ああいう炊事場のじめじめしたところで、しかも残飯なんかがあるわけですから、そこに夜な夜なやってきて食べたりしていたわけです。それで、ちょっと馬に似たかんじもする形なので、カマドウマやと」

 今、カマドウマが出る家屋は、都市部では昔に比べると少なくなったかもしれない。それでも、ちょっとした雑木林でもあれば、普通にいる。つい何年か前にも、子どもと一緒に夜の雑木林へカブトムシを採りにいって、共食いしているのを見たっけ。食われている方もまだ生きていて残酷だなあと思ったのだが、襲って食べたというより弱っているのを利用可能な有機物として粛々と食べていたということのようだ。

 それでは、カマドウマの生活史はどんなふうだろう。

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