ちなみにアグニェシュカさんはチーズ作りに使った牛乳をこんな容器で買い求めている。「ポーランドの田舎の祖母の家では、昔、同じような容器で牛乳を買っていましたね」と彼女

 故郷の味を出すために材料には徹底的にこだわる彼女。なんと、チーズは10日ほどかけ生乳から手作りしたカッテージチーズを使用。それも、理想の味わいを出すために県内の牧場から直接牛乳を買い付けたという。

 アグニェシュカさんのセルニクが大好物だという寿弥さんは「チーズの発酵の具合によって味わいが変わってくるんです。1日でも発酵が長いと酸味が強すぎるし、逆に短いと美味しくない。夏と冬でもチーズの仕上がりに違いが出ます。夏の方が生乳の脂肪が少なめでさっぱりとした味わいになるんですね。ですから、チーズの出来によって今日作るケーキと明日作るケーキでは全然味わいが違う。今日はベストですね」と満足そう。そして、「ポーランドでは市場で手作りチーズをお母さんたちが売っていて少しずつ味が違うんです。お客さんは食べ比べながら好みに合ったものを1キロぐらい買っていくんですよ」と続けた。

 セルニクは、チーズと卵、バター、砂糖、バニラエッセンスを合わせてオーブンで焼いたもの。干しブドウやオレンジピールなどを入れたセルニクも多いらしいが、「主人がシンプルな方が好きなので、うちでは何も入れないんです」とアグニェシュカさんは笑って、「どうぞ」とこれを出してくれた。

 一見、普通のスポンジケーキのようにも見えるのだが、いただいてみると爽やかな酸味が口いっぱいに広がる。チーズというよりヨーグルトのような味わいで、知らなければチーズケーキとは思わないかも。カッテージチーズは何度も裏ごしして滑らかにしたものを使っているといい、生地の舌触りはやわらか。でも、ふわっとした中にざくっとした食感もあり、これまで出会ったことのない味だ。勧められるまま、つい、2個目に手が伸びてしまった。

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