アグニェシュカ・ドブジャニスカ堀越さん。ポーランドの調理師・栄養士の資格を持つ。古都クラクフ近くの街ソスノヴィエツ出身

 俄然、食欲を刺激された探検隊。本場のシャルロトカを食べてみたいと向かったのはポーランドカフェ・レストラン「スモック・バベルスキ」。前回「ポーランド祭2014」で出会った屋台の店主アグニェシュカ・ドブジャニスカ堀越さんのお店だ。場所は栃木県西川田。宇都宮市南西部にあるのんびりとした町で「駅を間違えたかな?」と思うほど駅前には店らしきものが皆無に近い。ここから歩くこと数分。忽然と住宅街にポーランドの旗がはためいている建物が現れた。

 出迎えてくれたアグニェシュカさんは、民族衣装に身を包んでいた。出身地であるポーランド南部の衣装だ。自宅兼カフェレストランの小さな庭の脇には、低いフェンスを隔て背の高い木立が並ぶ公園があり、まるで森の中に住んでいるよう。「ポーランドの作曲家ショパンも、今は公園として整備されている美しい自然に囲まれた家で生まれたでしょう。故郷のように緑豊かな風景が広がるこの場所は私の理想なんです」と彼女はいう。

 さて、ポーランドでは、「家庭の味」は代々お祖母さんから受け継がれるもの。忙しいお母さんに代わって、年金暮しで時間があるお祖母さんが子どもたちに料理の手ほどきをするからだ。そのため、お祖母ちゃんを意味する「バブチャ」(バプカなどともいう)という名のついたお菓子がたくさんあるそう。だから、彼女のケーキも何代にもわたって受け継がれてきたお祖母さん直伝の味。作ってくれたシャルロトカは、南部の山岳地帯のスタイルのものだった。

 土台となる生地の上におろし器でおろしたリンゴを載せ、やはりおろした生地で上部を覆う。この生地は「プークルヘ」と呼ばれる、「半分シャキシャキ」という意味だという。いただいてみるとバターがたっぷり入っているのだろう。生地は少ししっとりとしながらも、高級クッキーのようなサクサクとした食感がある。フィリングにはリンゴ菓子によく使われるシナモンが入っていないため、かえってリンゴの果実味がストレートに伝わってくる。シンプルで素朴であるからこそ、味わい豊かなお菓子となっているのだろう。

「スモック・バベルスキ」の入り口。店名は、ポーランドの古都クラクフにある同国で最も有名な古城バベル城を守る伝説の竜(スモック)のこと。店内の窓からも庭越しに公園が見え、森の中にいるようだ
「スモック・バベルスキ」の庭。ラズベリー(左)やカシス、グーズベリーなどたくさんの果物を育てている(左)。右はポーランドでバースデーケーキによく使われるというハマナスの実

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